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尾崎先生と書生の皆さんが集まったお座敷はあっという間で、気が付くと終わりを迎えていた。
ずっと歩き回っていたせいか、そんなに時間が経っていたことに気づかなかった。
「鏡花さん、しっかりしてください」
「ぼくあ、しっかりしてるよぉ〜」
「じゃあ、ごめんねAちゃん。」
「ううん。大丈夫です。芽衣さんも気を付けてくださいね。」
べろんべろんに酔っぱらった鏡花さんを支えて、芽衣さんは先に上がって行った。
鏡花さんがお座敷に来た時、いつも送っていくのは芽衣さんの役目だ。
片付けを済ませ、お姐さんに帰っていいといわれた私は、音二郎さんを探していた。
裏口の近くで見つけた後ろ姿。
「音奴姐さ……」
帰りましょうと呼ぶ声を、途中で止める。
ほとんど満ちた月を見上げるその表情が、胸が締め付けられるくらい切なかった。
私は、その場に立ちすくみ、声をかけるべきかどうか迷うことになった。
「……。」
このまま、芽衣さんが鏡花さんと結ばれてしまえばいいと、何度も思った。
その度に、そんなことを思う自分が嫌になった。
この胸のもやもやに振り回されるのにも、もううんざりしていた。
希望なんか、抱くものじゃない。
だって、最初から、結果はわかっているのだから。
「音奴姐さん」
意を決して呼ぶと、音二郎さんは驚いたように振り返った。
「ああ、Aか……。」
悲し気な笑顔に、胸が締め付けられる。
「芽衣は、鏡花ちゃんを送っていったのか。」
私はその言葉に返事はしなかった。
それにこたえるだけの余裕を、私は今、持ち合わせていなかった。
心臓がバクバクと、うるさいくらいに脈打っている。
もう、結ばれないなら。
何も言わず、未練だけ残して去るくらいなら、
「私がいますよ。」
ここでフラれてしまえばいい。
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あき(プロフ) - スズシロさん» ご指摘、ありがとうございます。修正いたしました。そう言っただけて嬉しいです(^^)ありがとうございます！ (2020年1月16日 22時) (
レス) id: 9c8110894d (このIDを非表示/違反報告)
スズシロ - ページ8の夢主の台詞に誤字が…！素敵な作品でのめり込んでしまいます。白雪さんとの会話が大好きです。 (2020年1月14日 20時) (レス) id: 2278f8332d (このIDを非表示/違反報告)
ブラッディ・ドリーマー(プロフ) - 蛍さん» ありがとうございます！！頑張ります！ (2019年2月7日 17時) (レス) id: 75edeed284 (このIDを非表示/違反報告)
蛍 - 凄く泣ける!!感動しました!!これからも頑張ってください!! (2019年1月31日 21時) (レス) id: 9dca3fdc31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あき | 作者ホームページ：
作成日時：2018年9月2日 0時
