大人になった彼達は1

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4月も3週目に入った頃、研修期間を終えた新入社員が配属されてきた。

と言っても俺の部署には新入社員が配属されることはないので、
正確には隣の第一営業部に配属されてきた、という事だ。


今年の配属は全部で15人。
これから自己紹介をしてくれるらしい。

緊張した面持ちでビシッと一列に並んでいる様子を見るとそんな初々しい時代もあったかなあ、とジジ臭くなってしまった。

そんなフレッシュさに対して、うちの部は相変わらずPCに夢中な人も目に入る。

ただでさえこれから激務が待っているというのに、初っ端から怖い思いをさせては流石に可哀そうだろう。

ウン、やっぱり第一印象って大事だもんな。

さりげなく辺りを見渡し、一番強面な表情でPCとにらめっこしている近藤さん
・・・通称、ゴンザレス(と、俺が勝手に心の中で呼んでいる)
を新入社員の目線から隔てるようにススッと移動し、にっこりスマイルを浮かべた。



「少しでも早く戦力になれるように頑張ります！」
よくも悪くも新入社員らしいコメントが続く。

たまに、
「僕が同期の中で一番に受注をあげてみせます！」
なんて強気な挨拶をする子もいて。

ハハ、頑張れよ〜なんて乾いた拍手が起きる。

戦うべき相手はそんな狭いところじゃないぞ、青年よ。


9人、10人と続き、だんだんと拍手もばらつき始めた頃

「関西から来ました、向井康二です！お笑い、一発芸、任せてください！あと、タコ焼きもめっちゃきれいに焼けます！お仕事でも早く塩こうじみたいに万能に、・・・あっこれ、昨日から考えてたんですけど、えー、力になれるように先輩方の背中を追いかけます！」

コテコテの関西弁で、ダダ滑りの挨拶をした。
と思ったら、ベコン！と勢いよくお辞儀をするから動きまでうるさい。


ていうかめっちゃ緊張してんじゃん。

ぎゅっと握りしめた拳は力入れすぎて白くなってるし。
変に内股になっちゃってるし。
でもこういう子は何だかんだで愛されるタイプだ。

周りも俺と同じ心境だったのか、苦笑しながらも拍手の量も心なしか大きくなった。


そんな塩こうじくんは、ふっかのチームにつくらしい。

「康二、よろしくな〜」
なんて、もうふっかは下の名前で呼ぶから
「もう名前覚えてくれはったんですか！どないしよ、めっちゃ頑張ります！」

あーあー、張り切りに拍車がかかってんじゃん。

チームふっかはコミュ力おばけ集団か。

ひとり心の中でツッコミながら、そおっとゴンザレスの前から立ち去った。

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