大人になった彼達は1 (ページ43)

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それから、佐久間にしっかりと1000円分の舘さんカフェ代をおごってもらって、平穏な日々が戻った次の週末。

久しぶりに大規模ショッピングモールに足を運んでいた。

「俺ら、どっからどーみてもカップルじゃね！？」
「いや、どっからどーみてもただの友達だな」

そう、佐久間と。
いつの間にか休日を共にするほど仲良くなっていたらしい。

「そいうや佐久間、彼女さんは今日はいいの？」
「んー？うん。明日まで出張なんだって。だから佐久間さんひとりー」

へー。どうやらお相手はバリバリのキャリアウーマンらしい。
いつも彼女最優先。
夜呑みにすらいかない佐久間から誘われるのは珍しい、と思っていたらそういうことか。

「ね、さっそくだけど映画みようよ！」
「おい、めちゃめちゃカップルみたいなことすんじゃん！」
「佐久間さん、ずっと公開すんの待ってたんだよね～！RENくん主演で人気漫画実写化したやつ！」
「ああ、知ってるそれ。あれだ、舘さんカフェのラウールくんが好きなモデルだ」

映画の時間まで少し時間があったからウインドウショッピングを楽しむことにして。
夏用のスーツを新調したかったから佐久間に付き合ってもらって、紳士ブランドの店に入る。

「わ～そこそこいいお値段するね」

値札を見た佐久間がコソコソ小声で話しかけてくる。

「これはうちの業界特有の変な風習だね。それにこんな事くらいにしか金使う暇ないし」
「ひょ～。佐久間さんには無縁だわ～」
「佐久間、いっつもパーカーにダボダボのパンツだもんね」
「ほとんど会社出ないからね～」

何着か試着させてもらって、初めのうちは俺の後ろをついて回っていた佐久間だったけど、しばらくすると店内を散策し始めた。

待たせて悪いな。

「これ、カードでお願いします」
試着についてくれていた店員にスーツと一緒にカードを預けて会計を任せる。

「佐久間、ゴメンお待たせ。もう終わるから」
「ね、阿部ちゃん。ネクタイってプレゼントされても困るかな」

この店じゃ暇してるだろうと思い佐久間に声をかけにいくと、ネクタイのディスプレイを真剣に見つめる佐久間がいた。