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いつからだろうか。
記憶の中にいる昔のふっかはそうじゃなかった。
・・・無駄に大人になってしまった俺には、素直に理由(わけ)を聞くことが、できない。
「ラウールくん。これ、具材抜いてもらうことって出来る?」
今度はスープだけの状態にしてもらって、再度ふっかに手渡してみる。
「これ、スープだけだから。単なる飲み物だと思ってくれたらいいよ。どう?飲めそう?」
少し促してやると、ゆっくりとカップに口をつけ、こくんと喉が動くのが見えた。
一度飲めてしまえばあとは大丈夫なようで。
数分かけて飲み切ると、先ほどよりも大分顔色もよくなる。
「ん、ごめんね阿部ちゃん。ありがと。ラウールも、ありがとね」
ラウールがふっかの目を真っすぐに見つめ、ブンブンと首を横に振る。
「自分で思ってたより結構キてたのかも。いけると思ってたけど迷惑かけちゃった」
「俺・・・ごめっ、」
「んーん、阿部ちゃんが心苦しく思う必要なんてないよ」
ふっかがどんな顔をしているのか、怖くて顔をあげられない。
俺は、最低なヤツだ。
ここまで来てもまだ、何も動こうとしない。どこまでもズルいヤツ。
「阿部ちゃんはやさしーね」
俯いた視界に影が伸びたと思うと、俺の前髪がモフッと目にかかる。
そのまま何度もモフモフ、と髪が揺れた。
モフモフモフモフモフモフ・・・・
「・・・ね、目に前髪入って痒いんだケド」
「阿部ちゃんの髪の毛って、意外とパシパシなんだね〜。ビタミン足りてないんじゃない?」
「・・・染めすぎたんだよ!若気の至りだよ!」
「いいシャンプー紹介してあげよっか?」
「・・・お願いする」
「ハハッ!まかせろ」
『ラウも今からケアしといたほうがいいよ?』なんて話かけるふっかに、ラウールが素直にコクンと頷く。
俺はいつもふっかに救われている。
なのに、どうして俺は・・・。
自分の決心とは相反する揺らぎに息が詰まって、真っ白なワイシャツの胸元を無意識にぎゅっと握りしめた。
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作者名:透季 | 作成日時:2021年5月23日 17時