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「・・・っ、ふっか!?」
白い顔をさらに青白くして、ぎゅっと口元に手を当て微動だにしない。
「阿部さん・・・っ、たす、けて・・・!」
ここまで心臓が飛び跳ねたのは、生まれてこの方初めてだった。
「ふっか、ちょっとだけ動ける?・・・ラウールくん、片方支えて」
ラウールが頷いたのを合図に、両脇からふっかの体を支えてロビーの端まで移動させる。
まだカフェの片付け途中だったのか、端に寄せた長椅子にふっかを座らせた。
変わらず気分悪そうに体を前に倒して縮こまるから、隣に腰かけて薄い背中をさすってやる。
「ラウールくん、ふっか、いつから?」
「さっき・・・5分くらい前、です。外から帰ってきたと思ったら、急に・・・っ」
「そっか。ありがとね。・・・舘さんは?」
「・・・夕方の仕込みがある、から、・・・先に、」
いつも店をたたむより少し遅い時間。
お客が遅くまで残っていて、後片付けをラウールに任せて先に店舗へ戻ったのかもしれない。
いつもの様子からラウールがこういう状況に慣れているとも思えず、心細かっただろうと泣きそうな顔で目をキョトキョト動かす姿を見やった。
「ごめ、・・・もう、だいじょうぶ」
しばらくして、ふっかがゆっくりと手から顔をあげた。
まだ顔色が悪い。
「まだ無理しないで。手、冷たいね・・・貧血かな」
今回の事があってから。
何もないフリしていたけど、ただでさえ細かった身体はさらに骨ばった様子になり、顔色も悪い日が続いていた。
そんな様子に気が付きながらも見て見ぬふりをしていた俺は、あの次長と同罪だ。
「これ・・・、今日あまった野菜スープ、飲んで、」
貧血、という言葉を聞いてだろうか。
野菜と鶏肉が入ったスープカップを持ってきてくれた。
「ふっか、これ、飲んで?身体あったまるから」
ラウールが手渡してくれるも、一向に口をつけようとしない。
それどころか余計気分が悪そうに、スプーンを持つ手が心なしか震えている。
「ね、もしかしてふっか、ご飯たべれない・・・?」
何となく、頭の中でつながるものがあった。
昼食時、姿の見えないことが多かったふっか。
そういえば飲みに行ったとき、ほとんど固形物に手をつけていなかった、その理由は。
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作者名:透季 | 作成日時:2021年5月23日 17時