33 ページ33
「阿部ちゃーん、今度のコンペ資料の素案、ちょっと見てもらってもいい?」
「うん、データ送っておいて」
「ありがと〜」
その間、結局俺は何もできなくて、周りが元に戻り始めるのを傍目に見ているだけ。
一緒になってコソコソするわけでもなく、康二みたいに味方するわけでもなく。
罪悪感を抱えながら、ただ気づいてないフリをし続けるだけ。
ほら、俺が何もしなくてもこうして元の形に戻っていく。
物事、落ち着くところに落ち着くんだ。
けど、
「ふっかさん・・・僕、手伝えることありませんか?」
「ううん、大丈夫。俺が頼まれた仕事だから。康二先帰りな」
周囲もほとんど元の空気に戻り、そんな出来事も過去のものになるかと思われたが、
現実はそうはいかなかった。
「でもっ!・・・なんでふっかさんばっかりやらされやなあかんのですか!」
「ん〜俺がデキるヤツだからじゃね?なんてネ〜」
「ふっかさん・・・っ!」
22時を回った頃。
ほとんどの社員が帰り、ガランとしたフロアに康二が食い下がる声が響く。
「僕が力不足やから力になれやんくて・・・っ」
「康二、そんなんじゃねーよ。ありがとな」
ふっかが座る傍に俯いて立つ康二の頭に手を伸ばし、わしゃわしゃと撫で回した。
悔しそうに下唇を噛み立ち尽くす姿が見える。
騒ぎが起きて以来、最速で出世していき人望も厚く、もう2年後にはマネージャーかなんて囁かれているふっかの事が気に入らなかったんだろう。
名ばかりの次長がここぞとばかりにふっかに対してあからさまな嫌がらせを始めたのだ。
何かにつけて仕事にケチをつけたり、
次長がすべき雑務をふっかに押し付けたり、
「深澤、これ、今日中にやっとけ」
「ですが次長、この締め切りは来週だったはずですが?」
「上司に逆らう気か?いい度胸だな」
「いえ、仕事の緊急性と重要性から優先順位をつけているだけです」
誰が聞いてもごもっともなふっかの言い分。
それも最終的には逆上した次長がフロア外にまで響き渡る声で怒鳴りつけ、おちおち電話も出来ないほどの迷惑被る言動に、周囲を気遣ったふっかが最終的に折れる。
ここのところ、ふっかは日付を超えてから帰る日が続いているようだった。
278人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:透季 | 作成日時:2021年5月23日 17時