大人になった彼達は1 (ページ30)

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「あら、ラウールの声が聞こえないと思ったら。佐久間に阿部さん。はるばる此方までよくいらっしゃいました。ラウール、席案内してあげて」
「国王にお仕えする身ですから！何処へでも参ります！」

佐久間のやつ、暑さで頭でもおかしくなったか。

佐久間はオレンジジュースとペペロンチーノ、俺はコーヒーとピラフと頼んだ。

お店はカウンター席が4席と、テーブル席が6席ほど。
こちらの店舗自体も舘さんとラウール2人で切り盛りしているらしく、お昼のピークを過ぎた時間帯だからか俺ら以外に2組いるくらい。

都会の喧騒を切り離したような、ゆったりとした時間が流れていた。

束の間の空白。そんなときの話題、と言えば。

「ねー佐久間―、付き合ってる人とは長いの？」
「ちょっ！阿部ちゃん！なに急に！ヤメてよ～～！」

恋バナだよね～～～。
佐久間の顔がボンッっとピンク色に染まった。

「だって、すっごい大切にしてるじゃん？いつもご飯誘っても早く帰ってあげてるみたいだしさ」
「む～～だって、佐久間さん、だいすきなんだもん・・・」

口をもごもごさせて。
なにそれ、めっちゃ可愛い。恋する乙女じゃん！

「いいね～、いいなー！」
「もういいよ！佐久間さん、恥ずかしくて溶けちゃう・・・」

きゅう・・・、と効果音が聞こえてくるような、縮こまって顔を両手で覆う佐久間は幸せそう。

おいしい料理を堪能して、お腹も心も満たされて凄い良い時間だな～なんて思う。

そうこうしてるうちに時間は14時前になっていて、気づけばお客さんも俺ら1組だけ。

「ごちそうさまでした～」

お会計、と思いカウンター内の椅子に座っていたラウールに声をかけると、
珍しくハッとびっくりしたように顔をあげた。

「あっ、ごめんなさい、」

開いていた雑誌を隠すように勢いよくパタンと閉じて立ち上がる。

「およっ？ラウちゃん、RENくん好きなの？？」
目ざとく見つけた佐久間が声をかけた。

「あっ、いや・・・」

しどろもどろ。レジに歩きながら言葉を濁すけど、
それ、人気モデルRENの写真集だよね？

仕事中にみてたのを怒られると思ったのかな。
舘さん、あんまりそういうの言わないと思うけどね。それにお客、俺らだけだったし。

「REN、かっこいいよね」
「・・・っ、はい」

俯いてレジを打っているラウールに声をかけると、表情をパッと明るくさせて初めて嬉しそうな表情で頷いた。

おい、可愛いかよ。