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「阿部さん、出来ました。確認お願いできますか?」

できた!と、タンッとEnterキーを押したタイミングで声をかけられて画面右下に表示されている時刻をみると、14:54に変わったところ。

約束より6分も早い。
・・・へぇ、驚いた。

正直15時まででも厳しいと思っていたから
ちょっとくらい時間が過ぎてもしょうがない、と考えてたのに。


返されたUSBを読み込ませ、元データとてらし合わせてざっと確認していく。

「うん、上出来。ありがと」
「よかったです!」

緊張した面持ちでチェック待ちをしていた塩こうじくんは、ほっと息を吐いた。

「・・・んじゃあ、貰ったデータと俺作ったの、合算してフォーマットに起こすから。出来たら声かけるね」
「えっ・・・!そんなんいけません!僕がやらなあかん仕事ですのに・・・」
「データ合算は片方俺が触ってるからこっちでやるとして、30分くらいは欲しいんだよ。そっから残り30分でフォーマットに全部起こしきる自信ある?」
「うぅ・・・すみません。出来ません・・・」
「うん、大丈夫。そんなの当たり前だから、気にしないで。」

よろしくお願いします、と頭を下げ、トポトポと戻っていった。



集中モードに入って周りの音もあまり聞こえなくなる。

見落とした観点がないように、正確に。でもスピーティーに。

時間通りにデータ合算を終えあとはフォーマットに起こすだけだとふっと顔をあげると、
声をかけようかどうしようか、という迷いがみえみえな顔があった。

「どうしたの?」
「あの!前に深澤さんのみて勉強させてもらったの参考にして、書けそうなところ入れてみたんです。・・・もし余計に手かけてしまうようやったらすぐに消してください」

そう言って渡されたデータファイルを見てみると、フォーマットの中に今回の折衝履歴や会社概要などの文章が入力されていた。

ざっとみたところ、内容も遜色ない。

この子、育てたら出来るタイプなのかもしれない。

「ありがとう。めっちゃ助かる」

思わず横に跪いて低くなった頭に手を伸ばしてポンポン、と軽く撫でてやると、

「へへっ・・・」
気の抜けた声を漏らした。

「なんか気持ち悪いよ」
「ちょっと!何を言うんですか!」
「ゴメン、ゴメン」

たまにはこういうのもいいもんだな、なんて。
空欄だった作成者欄に『向井康二』と入れ、その隣の責任者欄に自分の名前を打ちながら独り言ちた。

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作者名:透季 | 作成日時:2021年5月23日 17時

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