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「とにかく!16時までに私まで報告するように。出来ないなら明日から君の席、ないから」
「はい・・・、何とかします」

スケジュールの切迫した案件でなければ昨日の今日で収支計画書をあげる必要はない。

そもそも一般の担当者が報告をあげるためには
営業部のチーフ以上の役職者もしくはマーケティング戦略部の人間を責任者に立てる必要があるのだ。


いつものしょんぼり顔ではなくて、真っ青な顔色で席に戻っていく姿を見ているとさすがに可哀そうになってきた。

それ以上に部署違いとは言え、ハゲ散らかした頭の次長に腹が立つ。
しれっと悪口言った気もするが俺は謝らないぞ。

どんなに優秀なヤツでも入社して2ヵ月そこらのペーペーが一人でどうにかできるとも思えないし、
あいにく営業部で残っているのは同じく新人か、役職のついてない社員ばかりだ。



ふっかがいつ戻ってくるのか分からないが、すぐにでも取り掛からないと時間がない。
幸い、収支を弾くために必要な基礎データは俺の手元にもある。


ふう・・・っと一息ついてから目の前の受話器をあげ、内線を押した。

コール音が秒速で切れる。

「お電話ありがとうございます!第一営業部、向井が承ります」
「俺です。マーケティング戦略の阿部だけど」
「あ・・!阿部さん、お疲れ様です!向井です」

元来持ち合わせたものか、はたまたふっかの教育の賜物か。
あんなにゲッソリしていたのに、電話口ではそれを全く匂わせない。

偉いじゃん。

「今、空いてる?俺の席来れる?」
「はい!いけます!」
「はーい、待ってますー」

受話器を置くとすぐ、しっかりペンとメモ帳をもってピョコピョコと小走りにやってきた。

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作者名:透季 | 作成日時:2021年5月23日 17時

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