大人になった彼達は1 (ページ13)

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・・・んで、前住んでいた家と窓の数が合わずにカーテンを買いに行ったり。
収納する前に一通り掃除をしたりしているうちに
あっという間に貴重な休みが終わってしまったというわけだ。

いつだったか大量にネットでポチってしまったワイパーがここで活躍するとは思わなかったけど。

ありがとう、過去の俺。

と言ってもまだ10分の1も消化出来ていないので、また貸コンテナを探さなくてはいけない。
それまでは1LDKになるのは我慢しよう。
いや、それを見越した2LDKと思うべきなのか？

けれど、そんな日常に反して最近はちょっと良いこともあった。

午前中、営業部との打ち合わせが長引き
予定していた実務を終えたのがお昼時を少し過ぎた13時半。

カタタタ、タンッ、とEnterキーを押してから時計を見やり、
まだ間に合うな、と財布をもって席を立った。

相変わらずふっかはいなかった。

「あら、阿部さん。いらっしゃい」
「遅くなっちゃった。もうお腹ぺこぺこだよ～」

1階のロビーに出ると簡易のキッチンカウンターに、
折り畳み式の木製テーブルとイスが何セットか並べられている。

「今日のおすすめはスモークサーモンとトレビスのバゲットサンドだよ」
「なにそれ！うまそう！それにする」
「ありがとうございます。よかったら野菜スープも一緒にどう？遅くまで忙しいだろうから消化を促してあげるのも大事だよ」
「じゃあそれも貰う。も～、舘さんは営業上手だね」
「ふふ、お褒めに預かり光栄です。・・・席に座って待ってて」

相変わらずロイヤルだ。
何だろう、言動に気品が溢れてるというか。

営業部はキラキラが舞って見えるが、舘さんはバラとかそういう系のすごい花が背景に見える。

月・水・金曜日の11時半から14時、店主の舘さんがうちのオフィスにカフェを出す「舘‘s Café」。

・・・正直、ネーミングセンスはないのかもしれない。

本名は宮舘さん、と言うらしい。

なぜ「らしい」なのかというと、胸元に着けているネームプレートにもなんと「舘さん」と書いているからだ。

しかも手書きじゃなくて、ちゃんとした金属製のやつ。
黒ベースに金色で文字が彫られてるオシャレなやつに「舘さん」。

もしかしたらそもそもセンス全般、怪しいのかもしれないな。
なんて。

「ん？」

いかんいかん。がっつり舘さんを見すぎて変に目が合ってしまった。

「なんでもないよ」
とほほ笑んで慌てて目線をそらした。