54 side にーちゃん (回想・3) ページ10
・
このままいけば、遠からず雅紀と俺はただの同居人になるだろう。
戸籍上は兄弟だとしても……そんな形式には何の意味も無いから。
形式なんかより、もっと大切な何かが、削り落とされていく音がする。
この瞬間も刻一刻と削られて
細く頼りなく掻き消えてしまいそうで
俺は怯えてる。
・
ただの同居人になってしまったら、俺は……
一度この家を出たら最後、もう帰っては来れないから。
「たまには帰っておいでよ」と請われても
「そのうちな」と、延ばして延ばして……きっと、二度と帰ることは無い。
家族でなけりゃ、この家には帰れない。
・
実際、半ば同居人になりかけている俺は
青い顔して目の下にクマつくってフラフラしてる雅紀に、かける言葉もなくて
「おー」と声を交わすことしかできなかった。
だって、何が言える？
顔色悪いけど、大丈夫？
クマができてるけど大丈夫？
飯、食ってる？
そんな言葉を吐くのは、ただの自己満足にしかならない。
どんな言葉をかけたところで、雅紀から「大丈夫」って言葉が返ってきたら
俺はそこで立ち止まるしかないんだから。
・
じゃあ、どうすんの。
ボロボロになった雅紀を、どうすれば支えられる？
途切れそうな雅紀と俺の関係を、どうすれば修復できる？
その答えが、見つからない。
見つからないまま、今日も、何かが削れる音に怯えている。
・
・
・
55 side にーちゃん (回想・4)→←53 side にーちゃん (回想・2)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 412人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えんどまめ(プロフ) - ebi信号さん» 柴犬顔…ﾌﾟｯ なるほど。オレンジ色の夕方!それ素敵〜!! もう帰らなきゃ……と背中を押されながら、何かが終わっていく寂しさとか、帰る家がある幸せが、心にこっそり忍び込んでくる感じ。アンニュイな兄弟の秋の夕暮れ・・・ぐふふ ご馳走様です。 (2017年9月25日 7時) (
レス) id: 843d1c1e57 (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - くっそぉ。柴犬顔のハイエナめ。たまらんっ！陽が落ち始めたオレンジ色の野っ腹に、やわやわ風に吹かれて遠くをみてる、そんな画がふと浮かびます。はぁ、癒されたー♪ (2017年9月24日 15時) (レス) id: 7ab42f2331 (このIDを非表示/違反報告)
えんどまめ(プロフ) - 11匹さん» どうもどうも〜ありがとうございます〜。妙なあとがきを書いちゃって、11匹さんの妄想を邪魔してないか心配(^^;) でもきっと皆それぞれ映像が浮かんでますよね。見せっこできるといいのにね〜。第三部もよろしかったらお付き合い下さいね〜。 (2014年10月1日 22時) (レス) id: 843d1c1e57 (このIDを非表示/違反報告)
11匹(プロフ) - 第二部、完結おめでとうございます( *´艸｀)景色と二人の背中や横顔やら想像してはドラマ的なカメラワークに飲み込まれてました。とても素敵なお話に今も気持ちがふわふわしてます。これからも二人を見守っていきたいです♪第三部も楽しみにしてます(〃￣ω￣〃ゞ (2014年10月1日 18時) (レス) id: 928f206419 (このIDを非表示/違反報告)
えんどまめ(プロフ) - natikoさん» ありがとうございまーす。美味しく召し上がって頂けてよかった。あの曲、お好きですか！同志！現代の感覚では、野暮ったいと言われそうな言葉が並ぶ曲だけど、沁みる〜。雅紀君がヒマになったのでスタゲも妄想スタートだぜ☆ (2014年9月29日 7時) (レス) id: 2747b465dc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えんどまめ
| 作成日時：2014年9月16日 13時
