絶望 ページ14
ローラーを握り締めながら、仲間と一緒に壁を塗る。
俺は天気が少しずつ暗くなっていたのに気付いた。
『夜だぞー。』
そう周りに呼びかける。
海面が上がり、土地が狭くなる。
3人はスパッタリー、ノヴァブラスター、ダイナモローラーだった。
編成が悪そうと一言小声で漏らしながら。
その時だった。
波が押し寄せて、スパとダイナモががっつり水を被り流されたのだ。
浮き輪状態で少しずつ波に流れ離れていく2人と、
大波で足場が無い状態の土地に取り残される自分含む2人。
絶望的な状況の中、自分の周りに光るものが見えた。
…それはヒカリバエだった。
荒れ狂ったシャケがこちらへ向かって襲ってくるのが見えた。
「ヘルプ!」
「助けて___」
流された2人はもうどこにいるかも分からず、助けの声だけが響いた。
「やばい…!」
そう唯一残った彼が一言発したと同時に波に飲み込まれた。
「助けてくれー!」
そう言いながら少しずつ流されていく。
その声はだんだん小さくなり、波の音でかき消された。
さらに、普段よりも海面が上がってきて、コンテナまで水没してしまった。
慌てて走り、唯一足場として機能している高台に避難した。
ヒカリバエを追いかけるシャケの対策で、消えた仲間のことなど考えられる状況ではなかった。
どうにかシャケを轢いて生きながらえていたが、波を少しかぶるほどの状況だった。
命の危険を感じる中、頭に何かの感触を感じた。
轢きながらも上を見上げると、雨が降り始めていた。
コウモリの雨ではない。
本当の水の雨だった。
『…!』
その瞬間、轢き殺せなかったシャケが俺を海に弾いた。
瞬発的にローラーを投げ捨て、高台の縁に手を掛けた。
下半身は水に浸かり義足は動かなくなっていた。
何も出来ないこの状況に、過去に経験した事の無いほどの絶望を受けた。
幸い1つのウェーブである1分40秒が過ぎたため、シャケは戻っていった。
いなくなったタイミングを見計らって最後の力で高台によじ登る。
安心と共に現実がまた視界に入る。
仲間もいない、雨風、大波。
ウェーブで変わる朝夜もずっと曇りのまま。
足も動かず、支給武器も流された為、八方塞がりだった。
少し周りを見渡していると、自分たちが乗ってきた船の破片があった。
絶望とはまた違った気持ちがよぎった。
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ウィングドライ(プロフ) - 愛音@ゴーヘド愛は誰にも負けないさん» オリジナルストーリー褒めてくれるのは嬉しいですねぇ。コメントありがとうございます! (1月8日 19時) (レス) id: e7df631082 (このIDを非表示/違反報告)
愛音@ゴーヘド愛は誰にも負けない(プロフ) - この作品、面白いです。なんか救助の場面はハラハラしました…頑張ってください! (1月8日 13時) (レス) @page47 id: 8e86fe11f1 (このIDを非表示/違反報告)
ウィングドライ(プロフ) - ただの紺色さん» 改めてありがとうございました! (1月8日 9時) (レス) id: e7df631082 (このIDを非表示/違反報告)
ウィングドライ - ただの紺色さん» そう言ってくれると嬉しい限りです!頑張ります!(違う機種でId違うと思うのですいません!) (12月27日 21時) (レス) id: 8ee71409c0 (このIDを非表示/違反報告)
ただの紺色(プロフ) - この作品読んでて楽しい、、! 無理はしないでいいので次待ってます、、! (12月26日 19時) (レス) @page46 id: ec9847f949 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Wingdry | 作成日時:2023年5月6日 20時