世界には愛しかない (ページ10)

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平手side

「あああー、痛いー。お腹が痛いー。なんて痛いんだー。死にそうー。うぅー」

……何やってんだよ志田！
……めっちゃ棒読みだし、演技ってすぐわかるんですけど…。

っていやいや、これは私のために…その、私とAちゃんを仲良くさせてくれるためにやってくれてることだから……。

そのまま、志田は私にAちゃんと合鍵渡して、教室を出ていった。

「志田さん…大丈夫かなぁ……」

めっちゃ心配されてる！
そう思ってAちゃんの方を見ると、表情をさっきとは変えてる。

……あ、私が案内していいのか気にしてるのか。

「いいよ、行こう」
「え……」

そう言ってあげると、目を見開いて、驚くAちゃん。

「なんか、めちゃくちゃ顔に出やすいよね？Aちゃん」
「えっ…。たしかによく言われるかも」

そう言ってどぎまぎする、その仕草さえもかわいい。

そのまま教室を回って、最後の保健室。
なぜか鍵は空いていた。

「………あ」

そこには抱きしめ合っている、志田とベリカ。
そこから、志田が……あ〜もう、言うのも恥ずかしい！

それを見たAちゃんは、顔を真っ赤にして立ち尽くす。

あ〜あ…ピュアな子に、何見せてんの…。

私はそっと鍵をしめる。

Aちゃんは口をパクパクさせる。
……やっぱりこういうの慣れてないよね。

うわ、なんか恥ずかしくなってきた！
すると、Aちゃんが振り返って、つぶやく。

「…あの、平手さん」

あ、そうだ。

「……呼び方」
「へ？」
「平手さんじゃなくて、友梨奈かてちがいいかなって」
「てち？」

不思議そうな顔してる。

「あだ名。変わってるよね」
「へぇ〜。かわいい！じゃあ、てちで！」
「やった！ありがとう！」

すっごい…嬉しい。
他のみんなから呼ばれる『てち』とは…次元が違う。

……私、もしかして。
……Aちゃんのことが好き？

気がついて、また顔が熱くなる。

いやっ……会ってそんな…一日でさ…。
はやすぎない？

すると、Aちゃんが笑顔を向けてきた。

「じゃあてち、私のこともAって呼んで！呼び捨てで」
「呼び捨て?!いいよ！」
「嬉しい〜」

呼び捨て…Aって呼べるのか！

「部屋、同じだしよろしくね、てち！」
「あ、よろしくね。A」

待って、一回呼ぶごとに心臓がドキドキする。

私…こんな気持ちになったの、本当に初めて。
本当に…Aのことが好き……なんだ。