世界には愛しかない (ページ21)

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平手side

…まさか、あいつに会うなんて。
しかも、Aがいるタイミングで。

ねぇ、A。
聞いてくれるかな？
私の、昔の話…。

ー2年前、夏ー

キュッキュッ…。
ダムダム…シュパッ

そんな音が響く、体育館。
練習に励む、女子バスケ部員たちの姿。

「うん、いいね、平手！」
「ありがとうございます！コーチ！」

あいつ…小村に褒められて、私は頭を下げた。

「そうだ、平手。少し話したいことがあるんだけど、この練習のあと、職員室に来てくれないか？」
「はい。わかりました」

話って何だろう。
今思えば、ここで行かなければよかったのか。
だけど、そんなことを行ってもあの頃の私には何も伝わらない。

「失礼します」
「お、来たか。まぁ、座れ」

私は、言われたとおりに練習のあと、一人で職員室に寄った。
そこにいたのは、小村だけ。

「のど、乾いただろ。これ、麦茶」
「ありがとうございます」

確かに、練習のあとで喉はすごい乾いていたから、勧められたお茶を一気に飲み干す。

ゴクゴク……。

冷たい液体が、ゆるゆると喉を滑っていく。

「……それで、話ってなんですか？」

そう聞くと、コーチはニヤニヤした。

……なに？
あれ…？
なんだか、体がフラフラする。

「…へぇ。本当に効果あるんだなぁ、これ。睡眠薬だっけ？」
「……え…」

なんの…こと？
だけど、私の意識はそのまま遠のいていった。

気づいたら、目の前には、小村の顔。

「なぁ、平手。一回でいいんだ」
「……な…に？」
「一回だけ、抱かせてくれ」
「……は」

意識はぼーっとしていて…。

すると、小村の手が、スカートに入ってきた。

「?!やめてっ！」

そこで、やっと小村のやろうとしていることがなんとなく、理解できた。

だけど、逆らおうとしても、相手は男。
力では、かなうわけない。

「やめてっ！いやっ……」
「……あぁ、本当に美形だよな、お前」

息が、顔にかかる。
胸元を乱暴に手で乱される。

嫌だっ……。
こわい…。

ガタッ

そこで、物音がした。

「誰か…いるのか？」

動きを止める小村。

「っ…！」
「あっ、おい、まて！」

その瞬間に、反射的に私は職員室から駆け出していた。

女子トイレに入る。

「……はぁはぁ…っ…ｸﾞｽｯ」

そこの鏡には涙でぐちゃぐちゃな自分の顔。

そこから、私は…学校に通わなく…ううん、通えなくなった。

男の人を見ると、あのときの感覚を思い出して、今でも気持ちが悪くなる。

だけど、私の言うことなんて…大人は、誰も信じてくれてなかった。

だから、中学2年生で、この女子校に転校したのだ。