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「あーもー分かったって!探す!ママ探すから!それで良いでしょ!」
「……ほんと?」
「うんうん、ほんとほんと。だからもう泣かないで」
「おねーさんありがとー!」
「いやあああ!お願いだから急にこっち来ないで!」
散々子どもの泣き声と周りの視線に当てられれば、こっちの精神も参ってくる。半ば投げやりな気持ちで彼の母親探しを請け負い、私は渋々ではあるものの、はぐれられる方が困るので彼と繋ぎたくもない手を繋いだ。うぅ、無駄に力が強い。
これで文句無いかよ、キ……なんとか牧師さんよ!!
こうして、私と見知らぬ男の子の母親探しは始まった。しかし私の場合は、彼の母親に加え渡辺先輩も探さなければならない。ここがどこなのかも定かでない状態で捜索が難航しない未来など無いに等しいような気もするが、こうなったら意地でもさっさと終わらせてやる。
「あ!見ておねーさん!くらげ!きれー!」
「……溶けるんだよ」
「とける?」
「クラゲ。90%以上水分だから、死んじゃったらほとんどのクラゲが、水に溶けるの」
「へー!じゃあじゃあ、あれは?」
「あれは……」
……さっさと終わらせてやる、と思っていたのに、子どもというものはなんにでも興味関心が向いて敵わない。数刻前の渡辺先輩もこんな気持ちだったのだろうか、と彼に腕を引かれながら少し申し訳なく思う。次からは自重しよう。
私が露骨に嫌な顔をしていても、彼の方はお構い無し。気になるものを指差しては、グイグイと無遠慮に人の腕を引っ張って、なんでもかんでも質問してくる。え?私もおんなじようなことをしていた?ちょっと存じ上げないですね。
「おねーさん、これなに?」
「知らない」
「えーそればっかりじゃん」
「知らないんだから仕方ないでしょ」
前にも言ったが、私は特に有名な大学は出ていない。故に頭はそれほど良くないし、記憶力だって良くない。
専門家でもない奴の魚好きなんて、所詮は限度があるということをこのガキは知らないのか。なのにそればっかりだと?こっちはさかなクンでもWikipediaでもGoogleでもYahooでもないんだぞ。ふざけるな。
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