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どう表現したら良いのかわからなかった。嬉しかった。驚いた。困惑した。切なかった。苦しかった。色んな感情が頭の中でごちゃごちゃになって、泣きたいのか笑いたいのかさえ分からなくなって、ただ彼の手を握り返すしかなかった。
同時に、やっぱりこんな彼の�狷段稔瓩任△訐欝椶気鵑悗料∨召�、より私の中で強くなった。でも前みたいななげやりなものじゃなくて、もっと複雑な、具現化できない感情。
―――『怖がらせてごめんね』
彼女の優しさに触れてしまったが故の、勝手に相手の人格を決めつける事のできない、どうしても心の底から嫌いになりきれない感覚。もどかしい。気持ち悪い。苦しい。
「……すみません。私、飲み物買ってきます」
「え、ちょっと！Aちゃん！なら俺も一緒に―――」
背中に投げ掛けられた先輩の言葉を無視して、ズカズカと人の合間を縫って進んでいく。飲み物を買ってくる、なんて嘘だ。今は少し、一人になりたかった。彼と一緒に居たら自分が自分じゃなくなりそうだったから。
思っていたよりこの水族館は広かったらしい。誰かに飽きないの？と問われそうなほどずっと自分の足元を見ながら歩いていると、気づいたときには辺りは見たことのない風景に包まれていて、人も多いせいか、目印がなかなか見つけられない。
参った。一人で飛び出した挙げ句、迷子になったなんて洒落にならない。どこかにパンフレットみたいなのがあれが良いけど。
「おねーさん……」
「ひっ……！」
―――その時だった。服の裾を引っ張られ、背後から忌々しい子どもの声が聞こえてきたのは。僅かに涙ぐんでいるように聞こえるその声の正体を確かめようと、なんとか首と腰を捻って後ろを振り返る。確かめる必要もなかった。そこに立っていたのは、三歳かそこらの男子児童だった。
よりにもよって、こんだけ人が居て何故私なのだ。そう問うた所で彼から返答があるわけもない。完全に私にターゲットを定めた子どもは私の服の裾を掴んだまま、ママ、ママと泣きわめき始める。拷問の始まりだ。
彼と一緒にママを探すことが正しいことであることは、流石の私でも分かる。だがここでその手を拒むことは果たして罪深いのだろうか。この空間にはきっと子どもが好きな人間も居る。わざわざ子ども嫌いな人間が手を貸す必要なんて……。
……。
…………。
……………………クソッ。
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