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「こーちゃんも遊ぼ」
「……やだよ。俺忙しいもん」
「暇そうだったじゃん」
「……」
どことなく喋り方に福良さん味があるせいか、なんとなくこれ以上食い下がる気にもなれなくて、仕方なく椅子から降りて朝陽君の隣に腰を下ろす。彼が動かすのは赤いスポーツカーだった。
ここまでやって機嫌を損ねられても困るから一応言われた通り動かしてるけど、このトラックはビーム出せてそのスポーツカーはスライム製ってどういう世界観なの?
まさか矛と盾?
なんでも破壊するビームトラックと何度でも再生するスライムカーの戦い?
いや自分で言ってても意味わかんない。
暫く「ビーム音出して」だの「朝陽攻撃するから避けて」だの、様々な要求を出されてはこなしていると、途端に朝陽君の手が止まった。右ならえで俺も手を止めると、彼の視線が仮眠室に注がれていることに気づく。
「朝陽君?」
「……おねーさん、だいじょーぶかな」
「あぁ……それなら蒼空、じゃなくて、ママが居るから大丈夫だよ」
彼の言うおねーさんというのは、今日このオフィスにやって来てすぐ絶叫をあげたAちゃんのことだ。なにがあったのかは俺も詳しくは知らないのだけど、蒼空曰く、駆け寄ってきた朝陽君に絶叫して、そのまま気絶したらしい。新手のミステリー映画か?
熱も出していると言うが、これは朝陽君のせいではないだろう。というより、誰のせいでもない。たまたま朝陽君が居る日に収集がかかって、たまたまAちゃんが来てしまったというだけの、偶然と偶然が重なって起きた不運の事故。
まぁ、彼くらいの年齢でそこまで割りきれるとは思わないが。
「……朝陽、ここ居るのめーわくなのかな」
「そ、そんなことないよ。ほら、山森さんも言ってたじゃん。みんな朝陽君のこと好きだって」
「―――でも、こーちゃん朝陽嫌いじゃん」
まさか本人の口からそんなことを言われる日が来るとは思わなかった。けれど確かに、いつばれていたって可笑しくはなかったと思う。子どもは素直であると同時に、人の感情にも敏感だから。
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