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「でも、良かった。元気になったみたいで。これからは無理しないようにね」
「あ、はい。ご迷惑をお掛けして、すみませんでした」
「良いよ良いよ。うちは前に旦那が倒れたり、朝陽が知恵熱出したりで、看病には慣れてるから」
謝ると、写真越しに感じた通り、やっぱり星宮さんは優しい人だった。今日初対面の私に対しても優しく接してくれて、ご飯を食べている間も、退屈にならないように色んな話を聞かせてくれる。頭もよくて、人としても完璧で、私なんかとは、真逆。
だからか、余計に自分が小さな人間に思えてきてしまう。優しくされる度に卑屈になっていく自分が、どこまでも子どもで、情けなくて。
渡辺先輩が大切な友人だと言う理由がよく分かる。福良さんが動画で、あんなにも嬉しそうにしてた理由も。
「そういえば、小森さんって地方から来てるんだよね。どこ住み？」
「えと、元々は岡山だったんですけど、今は鳥取に……」
「えっ、じゃあめっちゃ近いね！私香川なの実家！」
「あ、香川にも一時期父の出張で居ました」
「うわ〜その頃の小森さん会いたかったな〜」
あまり人に出身県の話はしないのだが、星宮さん相手だと何故だかするすると言葉が出てくる。それさえも中途半端な自分が見え隠れするようで苦虫を噛み潰したような気持ちになったが、当然表には出さない。いや、多分、頑張っても出せないと思う。
感情を圧し殺してしまいがちな私とは違って、星宮さんはコロコロと表情が変わる人だった。思ったことがすぐ顔に出るのか、とても分かりやすい。楽しい話の時は心底幸せそうで、苦い思い出話の時は眉間にきゅっとシワが寄っている。
当然と言えばそうなのだろうが、彼女の話は基本家族の話だった。勿論それが嫌だと言う訳ではなく、単純に、幸せなんだなって。
「いつかは旦那の野菜嫌いを直したいと思ってるんだけど、なかなか直んないんだよねー」
「なにかに混ぜてみたりとかは？」
「ダメダメ。あの人すぐ察して朝陽にあげるから。ほんと手強い」
でも、そこも憎めないんだから私も私なんだよね。くしゃっと破顔してそう言う彼女の横顔は、女性らしさと母親らしさ、どちらも備わっているような気がした。ただ美人な人ってだけじゃない強かさがあるというか、どこまでも、真っ直ぐな人だと思った。
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