悶える彼氏と落ち込む彼女の攻防合戦【我妻善逸】

参拾参ノ型 枯れそうな涙 ページ33

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『うぅ… 善逸の馬鹿ぁ……』


「はい。お茶飲んで落ち着いて」


『無一郎くん、あ"り"か"と"う"……』


「いいよ。だから鼻水拭こうね」




無一郎くんから渡されたちり紙に鼻を啜る。

酷いよ、善逸。私じゃない女の子と遊びに行って首に傷を作った挙句、私の大切な家族を殺すなんて。

そんなの、あんまりじゃないか。

どうしてこんなにも救われない結果になるんだ。



どれだけちり紙で拭いても涙は止まらない。

そりゃ鬼殺隊だし鬼は滅殺するべきだ。間違いない。
善逸の判断は間違っていない。そんなのわかってる。分かってるけれども。

でも、鬼虎は人に無害の鬼だった。禰豆子ちゃんまでとは言わないかもしれない。だけれど、人のことは襲わなかったし奇跡の存在かもしれないじゃないか。

そして何より、鬼虎は私にとって唯一の家族だった。
小さな頃に亡くなった家族が再び増えた気がした。それくらい可愛がっていたのだ。

鬼虎との日々が癒された。


なのに。善逸にそれを奪われた。

どうして。鬼虎は善逸に何もしていないじゃないか。なのに、どうして。どうして殺したの。どうして___




「鬼だから。」


『へ、』


「… 鬼は殺すべきだよ。僕達は鬼殺隊なんだ。」


『…… でも、鬼虎は無害だよ。き、昨日、鬼虎が怪我した私の足を舐めてくれたの。血をだよ？なのに鬼虎はその場で襲ってこなかった！それって鬼虎はまだ人間に戻れる可能性が___「A、過去のことはもう変えられないよ」


「鬼虎はもう死んだの。もう生き返らない」


『…そんなの分かってる』


「きっと今、…鬼だから天国じゃないけど、地獄でAのこと見守ってくれてるよ」


『っ…、』




痛い。心臓が痛い。

出てくる涙なんてもう無いくらい先程泣いたのに、またホロホロと涙が零れてきた。

私が弱かったから。また、大切な家族を守れなかった。…あの時みたいに、私が弱かったから。

全部、私が悪いじゃないか。




「…… あの金髪とはどうするの？」


『…… 分からない。けれど、今は顔見たくない』


「じゃあさ、」




隣を座っていた彼は立ち上がり、私の目の前に立った。




「僕の家にずっといなよ」






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