昔懐かし漢字ドリル ページ10
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漢字と言えば、この前実家から送りつけられてきた荷物の中に使いかけの漢字ドリルが入っていた気がする。
学生の頃の自分はなんでも出来る気がしてたからな。あの時は漢字の覇者になれる気がしてたんだよな。
今思い返すだけでも羞恥心で死にそうだわ。
恥ずかしい記憶は一先ず穴に埋めて、早速隣の部屋で荷物の入った段ボールを開封する。
だが出てくるのは小さい頃のアルバムだとか、小学校の頃にあった図画工作で作った竹トンボとか、昔懐かしな物ばかり。
こんなの今更送られてきても困るんだけどな。段ボール一箱に収まるような荷物すら置く場所が無いって、どんだけ実家に荷物あんねん。
「 あぁ、あったあった 」
とぅるるるっとぅる〜!漢字ドリル〜!
どこぞの青いタヌキばりの効果音をつけながら、発掘した漢字ドリルを天に掲げる。
中身を確認すると、殆ど空白だった。恐らく漢字が難しすぎて飽きたんだろう。だってこれ漢字検定一級の漢字しか載ってないもん。身の程を知ったんだろうな。
漢字検定一級の漢字ドリルじゃ流石に難しすぎるかなぁと思いつつも、これしか無いので取り敢えずこれを持って行ってみる。
そーっとリビング戻ると、私が居なくなったことで漸く息を吐けたのか、警戒していた子達の声が初めて聞こえた。
「 いざわさ、ちょっとあのひとのこと、しんよーしすぎじゃない? 」
「 そんなことねーよ。だって、いいひとだもん 」
「 そんなのわかんないじゃん 」
「 ふくらさんはけーかいしすぎ 」
「 おれもふくらにさんせー 」
「 かーむらさんまで…… 」
いざーくん、お前はなんて良い子なんだ。私たちまだ出会って数時間なのに、お前はそんなにも私を信頼してくれてんだな。おねーさん、なんか意味もなく泣きそうだわ。
段ボールの中からも見える位置に移動すると、流石に段ボールの中に居る子達は隅っこに逃げてしまった。
いつの間にか外にはすがいくんとこーちゃんが居て、こーちゃんは私が近くに来るとちょこちょこと駆け寄ってくる。
あっは。やべー可愛いわ。
「 おねーさん、だっこ 」
「 もう怖くないのか? 」
「 うん。だって、おねーさん、やさしーもん! 」
「 こーちゃん……!!! 」
駄目だ。ここ数年の日常が地獄過ぎたせいか、この小人達の言葉にいちいち泣きそうになってしまう。可愛いって正義だな、ほんと。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月29日 18時