【 Third party 】 ページ50
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「 ……夢オチ展開だと思ったか? 」
「 いや?現実逃避してんなって思った 」
「 元はと言えばテメーのせいなんだよクソが! 」
目の前の女はダンッ!とジョッキを机に叩きつけると、その音で少し冷静さを取り戻したのか、いそいそと卵焼きに箸をつけ始める。
その様子を眺めながら、俺はうざいだろう笑みで彼女を笑ってやった。
「 それで、あれからどうなったの。その七人とは 」
「 ……あいつら、自分の家があるくせに、定期的に私の家に遊びに来やがるんだよ 」
「 へー良かったじゃん 」
「 良かねぇよ!こっちの心臓が持たねーわ! 」
元凶のお前が責任もって注意しろや、と彼女は箸で俺を指しながら言うが、生憎そこまで優しい人間じゃないんで、その怒りはスルーすることにする。
この女―――有働とは大学時代からの付き合いだ。
たまたまウマがあったと言うか、自分を取り繕わなくていい関係が、個人的にとても居心地が良かった。
―――『 ……死にたい 』
―――『 ……急になに? 』
有働はもう覚えていないかもしれないが、酔っぱらったあいつは何故か俺に電話をかけてきて、暫く「 死にたい 」を連呼すると、なんの言葉もなしに通話を終わらせてしまった。
あれからなんだかんだ気がかりだった。
だから小さくなった七人を拾ったとき、あいつの元に世話を頼もうと思った。
大学の研修が忙しいと嘘をついて。
「 大体お前が小人なんか送ってこなきゃな…… 」
「 でも楽しかったんだろ?小人との生活 」
「 …… 」
俺が原因を探しあてる必要もなく、彼らは元の姿に戻ってしまったようだが。
けれどやっぱり、多少強引にでも彼らを彼女の元に送って良かったと思う。
知識では難攻不落の城のような七人の甲斐あって、有働含むその他社員はブラック企業とおさらば出来たみたいだし。
それに。
「 ……今の生活も、別に悪くはないよ 」
あんなにも生きることに苦痛を感じていた有働の表情が、明らかに明るくなった。
小さな彼らや、元の彼らがきっと、彼女を変えたんだ。
ほんと、素直じゃないな。俺もこいつも。
「 水上、なに笑ってんだ 」
「 笑ってないよ。被害妄想も甚だしいね 」
「 はーうぜーこいつ 」
まだ死ぬまでは長いと思うけど、まぁ頑張りなよ、有働。
完
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月29日 18時