【完】社畜と七人の小人【all】 (ページ48)

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夢くらい幸せでページ48

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「でさぁ、まじでさぁ、あのはげいつかぶっ殺してやるんだよぉ…… 」
「うんうん、そっかぁ。大変だね、Aさん」

　かなりのハイペースで酒を飲み干したAさんは、案の定すぐに酔いが回り、今は福良君の膝に寝転がってずっと会社の愚痴を溢している。
　俺は残念ながら彼女から一番遠い場所に座ってるから、彼みたいなラッキー展開には恵まれないし、伊沢みたいなことも出来ないし、元の性格上、露骨にアピールもできない。

　ズルいよなぁ。残った酒を煽りながら、けっけっけっと不気味な笑い声をあげるAさんを眺める。
　俺だってちょっとは近づきたいのに。

「須貝さんはなにか行動しないんですか」
「そういう河村くんだってしてないじゃない」
「僕は間接キスしたんで、これ以上は罰当たりかなと」
「いや小学生かっ！」

　咄嗟にツッコミを入れてしまって、そんな自分に頭を抱える。
　別に奥手ってわけじゃないのに、今回に至ってはかなり遅れを取っている気がする。
　こんなツッコミばっかしてるからだよなぁ。

「あ、Aさん寝ちゃった。須貝さん、Aさん運んでくれますか？」
「 ……え、俺？」
「はい！俺運びたい！」
「伊沢はダメ。なんかやらかす」
「福良さんは俺のことなんだと思ってんだよ！」

　なんか分からないが、悩んでいる内にAさんを寝室にまで運ぶ役を仰せつかってしまった。
　恐らく俺がこの中で一番安心だと思われているのだろう。
　俺的には、一番安心なのは乾だと思うんだけどな。

　あぁでも、あいつもう寝てんのか。

　頼まれた以上、しないわけには行かない。
　見た目以上に軽いAさんの肩と膝の裏に腕を回し、起こさないよう、そっと持ち上げる。

　―――『 …………無茶しないでよ。ただでさえ、脆い存在なんだから』

　不思議な感覚だ。
　少し前まで俺の方が両手で持ち上げられる側だったのに、今じゃ酔っぱらって眠ってるAさんをそんな俺が運んでるんだから。

　寝室の場所はもう把握している。
　迷うこと無く一直線にそこへ向かい、無防備に寝顔を晒しているAさんを、そっとベッドに寝かせた。

「んん……ぶちょ……ころ、す…… 」

　嫌な夢でも見ているのだろう。眉間にシワが寄っている。
　そのシワを伸ばすように、俺は眉間をそっと撫でた。

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