迫り来る出勤 ページ43
□
「 伊沢さん、駄目ですよ。抜け駆けしちゃ 」
「 言われなくてもしねぇよ 」
「 NUKEGAKE？ 」
あれ、もしかして話の展開に着いていけてないのって私だけ？
下心？抜け駆け？
まさかそんな、ねぇ。私を巡って奪い合いなんて、そんな展開があるわけないでしょうに。
え、もう準備してた方がいい？「 私の為に争わないで！ 」って言う準備しといた方がいい感じ？これ。
一人テンパっている私を置いて、スタスタと歩いていってしまう話の展開。
追い付こうにも、指先が触れた時にはまた展開が二転三転し、私の頭は朝からパンク状態だった。
……ん、�� 朝 �瓩�ら？
「 うおやっべ！会社！ちょっと君たち！話は夜頼む！食事は各自取ってくれ！では解散！！ 」
「 慌てすぎやろ、あの人 」
川上くんのツッコミを背に、洗面所と寝室、そしてローテーブルの前を行ったり来たりすること三十分。
いつもより出る時間が十分遅くなってしまったが、これならまだ間に合う。
あの豚のことだ。どうせまだ来やしない。
矢継ぎ早に「 行ってきます！ 」と部屋の中へと叫んで、家を飛び出す。
「 行ってらっしゃい 」が返ってきたかどうかは、あんまり覚えていない。
「 うえ……はあ”……死ぬ……三途の川が見える…… 」
「 珍しいね。有働がこの時間に出勤するなんて 」
「 おう同僚よ。まぁ色々あるんだよ、私にも 」
「 さては男か？ 」
「 ﾌﾞﾌｫｵ！！ 」
「 え、マジかよ 」
「 いや、違う。断じて違う。断じてそういう関係ではない 」
イン会社。
相変わらず殺伐とした空気の漂っているオフィスに足を踏み入れ、二日ぶりの同僚と顔を会わせたのだが、不覚にも彼女の「 男か？ 」という問いに動揺してしまった。
前までならば「 あれは小動物だから男というよりオスだな 」とか馬鹿げたことが言えたのだが、今回の事案はそういうわけにもいかない。
だって、どう見ても男だろ！あれをどう見たら別の性別に見えんだよ！
別に疚しいことはなんにもねぇけどさ！男なんだから仕方ないだろ！
「 家に男が居ることは否定しないんだな 」
「 ……イヤ、オトコナンテ、イナイヨ 」
「 もうおせぇよ 」
「 くっそがぁ！！ 」
持ってきた鞄を椅子に叩きつけて、床を叩く。
なにやってんだよ私は。あの子達が来てからペースを乱されっぱなしだ。
▷
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 550人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朝田 | 作成日時：2020年12月29日 18時
