夕飯はコンビニ ページ4
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日も沈み、すっかり世界が真夜中と化した頃、私の仕事は漸く終わった。
隣の同期は血反吐を吐きながらパソコンにしがみついていたが、ここは弱肉強食ならぬ遅肉早食の世界だ。名残惜しいがなんとしてでも自宅に帰りたい私は友人を泣く泣く見捨て、オフィスを飛び出した。
大丈夫だ同期よ。お前のことは忘れない。
多分。
「 今日はパスタ〜パスタパスタ〜 」
この社畜日和で一番の味方は二十四時間営業のコンビニだけだ。
近々人件費削減の関係で二十四時間営業じゃ無くなるらしいが、そんなの私信じないわ。だって信じたくないもの。
真夜中でも変わらず開いているコンビニでお目当てのパスタを買い、温めは大丈夫ですと言って三円する袋を手に外へ出る。
上を見上げても、空に浮かぶ星は一切見えない。東京の空というのは馬鹿みたいにつまらないな。
「 あ〜パスタ食ったら死にてぇな〜 」
真夜中と言っても、まだ人通りはある。そんな中、パスタの入った袋を揺らしながら「 死にてー死にてー 」呟いている私を、周りの人間は完全にヤバイ奴を見る目で見ていた。
別にあんな目で見なくても良いのにな。
ただ「 死にてー 」って言ってるだけなのに。
東京は冷たいねぇ。
「 ……あ、酒買うの忘れてた 」
ピタリ、と足が止まり、顔をあげる。目の前にはもう自分の部屋。酒は欲しい気分だったが、ここまで来て引き返す気は起きない。
今日の所は酒を諦めよう。そう思い鍵を使って、部屋に入る。相変わらずソファーとベッドと机しかない寂しい部屋だ。だってそれで生活できるんだから仕方ないだろう。
残りの仕事が詰まった鞄をソファーに叩きつけて、ベッドに飛び込む。
風呂なんて明日だ、明日。今日の私は頑張ったんだ。褒めろ。誰か褒めろ。
「 くそがぁ……なんでパスタの方から来てくれないんだよぉ…… 」
面倒くさい。全てが面倒くさい。パスタをレンジにぶちこんで胃に掻き込む行為すら面倒くさい。
もういいや。晩御飯も明日にしよう。なんたって明日は百億年ぶりの休日だ。なんでもし放題。自由。私が神だ。誰にも私の休日は邪魔させねぇからな。
ボーッとそんな頭の悪いことを考えていると、段々と意識が闇へと葬られていく。
ダメだ、もう瞼が重すぎて上げられない。
次起きたら、どこぞのお嬢様に生まれ変わってないかなぁ。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月29日 18時