必殺技は方言 ページ30
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「 いざわさん、はやすぎませんか 」
「 あ、川上くんも終わったんだな 」
「 うん 」
夕陽に照らされた段ボールから今度は川上くんが出てくる。
彼の服装は、紺色のパーカーにジーパンという組み合わせだ。基本緩い服が動きやすいらしい。
川上くんはもうティッシュ箱に登ってはしゃいでいる伊沢くんを一瞥すると、その足で私の元までやって来た。
唯一の金髪( 乾は人間なのでノーカン )というのもあってチャラいイメージはあるけど、実際の彼は周りを良く見れる真面目な子だ。そして、意外と恥ずかしがり屋。
「 んー 」
「 ……あの、みすぎちゃう? 」
「 いや、似合ってるなぁって 」
「 べつに、ふつうやろ 」
この二週間で知ったことだが、彼は動揺すると関西弁が出てくる。そこもまた萌えポイント。
やっぱ方言ってズルいよな。私なんて「 じゃけぇ 」くらいしか方言ないんだが。クソダサい。
「 川上くんの方言って良いよな。可愛い 」
「 ……かわいいひとにいわれても 」
「 おーおー、お世辞なんて使っちゃってぇ 」
小人にお世辞を言われた人ってこの世に居るのだろうか。
居ないとしたら、私が世界初だよな。やっべぇ、こりゃギネス記録に認定されるわ。
面積は少ない分、弾力が乳児並みの川上くんの頬を人差し指でつつく。
そんなお世辞使わなくたって、君が好きなぶいちゅーばー?はいくらでも見せてあげるよ。
「 おせじじゃないよ 」
「 ありがと。その言葉だけでも嬉しいわ 」
「 おねーさん、じょうだんだっておもってる 」
「 そんなことないよ 」
バリバリの嘘。元々自分の顔に自信なんか無いし、今の会社に就いてからは前より更に老けた気もする。
まだ二十代とは言え、そろそろ年期が入ってきたかなぁと思うことは少なくない。
学生時代の自分が羨ましい。当時はあの若さが永遠に続くと思っていた。そんなことある筈が無いというのに。
「 きぃつけや。ほんまに、あんたきれいなんやから 」
「 お、方言 」
「 ほーげん、よわいみたいだから 」
「 これは川上くんのサービスっていう解釈で良いかな? 」
「 いーよ。へるもんじゃないし 」
いや、でも、方言での「 あんたほんまに綺麗なんやから 」は反則だよな。
相手は種族すら違うのに、不覚にもちょっとときめいてしまった。
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作者名:朝田 | 作成日時:2020年12月29日 18時