服のお披露目会 ページ29
□
「 小人達集まれ〜！ 」
「 ふくできたの？！ 」
「 伊沢くんめちゃくちゃ早いな 」
呼び掛けると、すぐに走って来てくれる小人達。
そんな彼らそれぞれに作った服を手渡して、早速着替えてきてもらうことにした。
一応寸法もしっかり測ったから、サイズは間違ってないと思うのだけど。もしキツいとか大きすぎるとかあれば今日中に修正しておきたいところである。
「 おねーさん！おれ！きがえた！ 」
「 おっ、伊沢くん一番乗りだな 」
一番最初に段ボールから出てきたのは伊沢くんだった。
彼は運動のしやすそうなTシャツと短パン姿で華麗に机に飛び降り、私の前でしっかりと決めポーズをし始める。うんうん、アクロバティックな伊沢くんにぴったりだ。
彼は恐らく一番動き回るだろうからと、素材は伸縮性の高いものを選んだ。伸びやすく、汚れが取れやすい。
ズボンにゴムを入れるのにはかなり苦労したけど、これだけ喜んでくれるなら頑張った甲斐があるな。
「 おねーさんすげー！あんなにてぇけがしてたのに！ 」
「 手のことは言うんじゃない 」
絆創膏だらけの両手を隠すように、机の下に移動させる。
本当は傷一つ作らずにこのクオリティーの服を作りたかったんだけどね。そしたらクールでしょ。
普段から仕事疲れだとか余裕のない姿ばっか見せてるから、少しでも「 この人なら大丈夫だ 」って思わせたかったんだよ。
この通り、手は傷だらけだけど。
「 なんで？かっこいーよ、おねーさん 」
「 どこが。めちゃくちゃダサいよ 」
「 おれらのために、いたいおもいまでして、つくってくれたんだもん。かっこいーじゃん 」
「 ……そんな大層なもんじゃないって。ただ単に私が不器用なだけだよ 」
「 いっしょーけんめーぬってるおねーさん、おれ、かっこいーっておもった 」
私の正面に腰を下ろし、机の上で胡座をかく伊沢くん。
彼は真っ直ぐな瞳で私を射ぬくと、もう一度、「 かっこいーよ、おねーさん 」と繰り返す。
いつも一番暴れまわって、他の子に呆れ返られてる彼なのに。
今日だけは、誰よりも大人びているように見えた。
「 おれね、おねーさんのとこ、これてよかった 」
柔らかく微笑み、そう呟く彼に私は暫しの間視線を奪われていた。
分からない。この子は、こんな表情をする子だっただろうか。
▷
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 550人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朝田 | 作成日時：2020年12月29日 18時
