【男主】身長8cmの高校生を拾った件について【BL】

巨人 ページ4

side.you





夢でも見てるんだろうか。





目が覚めたら、
巨人に食べられそうになっていた。


いつ寝たのかも、
なんでここにいるのかもわからない。

でも左腕はじんじんと痛みを訴えていて、
これは夢じゃないと実感させてくる。


そういえば、さっきも夢で
潰されそうになったような......。



殺されるんじゃないか
食べられる？ それとも、
身体を引きちぎられて......



恐怖で身体が動かない。
震えながら、巨人を見つめていると
不意に巨人が口を開き、思わずビクッとした。



「あのー......君は、どうして俺のポケットにいたの？」
「へっ......ポケット......？」
「そう。どうやって入った？」
「し、知らない......」



ふむ、と巨人は考える素振りをして
僕に向き直り、状況を説明してきた。


・僕がいつの間にかポケットに入っていたこと
・虫かと思って潰しかけたこと
・人形だと思って持ち帰ったこと
・この世界では多分僕だけがこのサイズなんだということ
・殺す気は無いこと


淡々と説明されて
次第に震えが止まった。

えっと、つまり。



「僕が、縮んでるってこと......？」
「だな。ていうか君、名前は？」
「え......」



名前_______




「......わかん、ない......」




どうしよう。
思い出せない。

考えてみれば、自分が誰なのか
どこに住んでいたのか、
どうして縮んでいるのか等、何も思い出せない。



「記憶喪失......？」



そう言われ、こく、と困惑気味に頷く。



「俺も、君には見覚えがないんだけど。木野千馬って名前、聞いたことある？」
「ううん......」



この人が知り合いかもしれない。
けど、わからない。もやがかかったように、
何も思い浮かんでこなかった。



「どうしよう......」



途方に暮れる。
外には、この人サイズの人間だらけで
そんな中で、僕はどうやって
これから生きればいいんだろう。


夢なら早く醒めてくれ。


ズキン、と思い出したように左腕が痛む。
ぎゅっと抑えて、「いたた...」と呟いた。




「_____あ〜......あの、さ。良かったらアテがつくまで、ここにいる？」
「......えっ」




いいの？ という目で彼を見つめると、
彼は頬を掻きながら苦笑いした。



「どうせ一人暮らしだし。それに俺、虫だと思って君のこと潰しかけちゃったし。記憶も無いんでしょ？」




ほっとけないよ、と彼が言う。







「ありが、とう......」









お願いします、と
泣きそうな声で頭を下げた。

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