19% ページ19
.
最近、神戸先輩とは電話することが多い。
『明日さ、春高初日じゃん』
『はい』
『寝れない(笑)』
『寝ないと疲れとれないじゃないですか!』
『なんか、子守歌みたいなの歌って』
偶にこういう無茶振りしてくるからやめてほしい。
歌ってあげると音痴だから余計眠れないって言ってくるんだよひどいよね。
『あー、めっちゃ笑った、なんであんなに歌下手なの』
『元々、兄に比べて下手なんですよ私』
『え、お兄さん居るの?』
『あ、はい。あのサントリーの山本湧です』
めちゃくちゃ驚いた声が電話越しに聞こえる。
うるさいって、誰かに怒られている声も。
ごめんごめん、と適当にあしらっている声が
何とも言えないぐらいに可愛く聞こえる。
あのさ、と先輩のさっきより少し震えた声と、のどを鳴らす音がする。
『バイト先で男の人と帰ってたの見かけたことあるんだけど…お兄さん?』
『あっ、はい。兄ですね、兄しかいません』
ここはきちんと断定しとかないと。
『そっか、よかった』
いい夢見れそうだわ、おやすみ。また明日。と通話が終わる。
こういう事確認してくるってことは……ああいうことでいいんだよね?
___もし、もし、春高で日本一になったら想いを伝えよう。
そう決めて、ベットの明かりを静かに消した。
.
東京都第1代表として舞台へ立つ。
春の高校バレー。
バレーボーラーなら一度は立ってみたいと思うセンターコート。
マネージャーを始めたのは、少々、不純な動機だったけど
彼らを支えたいと思う一心でコートの外からサポートする。
神戸先輩が卒業してもマネージャーは続けるつもりだ。
日本一へ。その一寸の光を掴むため、彼らはコート上を舞った。
.
洛南高校に敗れ、結果は3位だった。
『なんで俺らより先に、泣いてるの』
ベンチへ戻ると、悔し涙を浮かべている山本さんが待っていた。
『い、いや、我慢しようかと思ったんですけど
どうしてももう堪えられなくて……!』
俺のタオルで彼女の涙を拭う。
阿品「山本につられて俺まで涙出てきたわ」
このナオの言葉が合図となったのか、それぞれが悔し涙を流し始める。
体育館の照明がとても眩しく見え、目を細めた。
.
1人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
成瀬▼(プロフ) - まるさん» むしろコメントありがとうございます( ; _ ; )そう言って貰えて嬉しい限りです! (2019年11月2日 13時) (レス) id: 7e89a42ab7 (このIDを非表示/違反報告)
まる - 一年前の作品にすみません!最後の展開(回想?)胸熱でした!素敵な作品をありがとうございます! (2019年3月19日 22時) (レス) id: 9d57b2db44 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:成 瀬 ▼ | 作者ホームページ:http://naru_se.0706
作成日時:2018年3月22日 17時