あなたが居なくなった世界は【佐野万次郎】

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『痛くない？』

｢…ん。｣





ここ最近、ずっと大阪にいた。
Aにいつでも会えるように。

６年間、６年間だ。

俺は堕ちるところまで堕ちたと思う。
本当にもう、人生などというものに、生きるということに執着が無かった。
呪われたように人を殺し続けた。
それをしてもなんとも思わなかった。
人の命なんて空気よりも軽いことに気付いたから。





『寒かったら言ってね。毛布もう一枚持ってくるから。』





あの日、Aにメールを送った日。
本当はあの時、もうなにもかもを終わりにするはずだったんだ。
だから送った。
最期に、人生で一番愛した人間に会いたかったから。
どんな顔をされてもどんな言葉を言われてもよかった。





〈からかうな！！馬鹿！！〉





Aはそう言った。
どうにも、その言葉が引っかかっていけなかった。
からかってなんかない、俺は本気だ。

…Aにもう一度、会いたい。

そこからはそれの繰り返しだ。
あと１回会ったら終わりにする、あと１回会ったら終わりにするって、そればっかりで。
Aに会う度、俺はまだ生きていたくなる。





｢…A、｣

『うん？』





＿＿＿＿愛おしい。

溢れ出してくる。
今俺の目の前にいるこいつが、こんなにも愛おしくて、可愛くて、どうしようもない。





｢…お前は可愛いな、ずっと。｣





Aは分かりやすく顔を赤くする。





｢…もう会わないつもりで、毎回俺は会いに行く。｣





Aがそれを、許してくれるから。





｢そうするとまた、会いたくなる。｣





Aに会えるなら、なんだってする。





｢…俺は弱いよ。お前を守るなんて言っといて、俺が一番傷付けて、泣かせて、｣





Aに気付かれないように、AのスマホにGPSを付けたんだ。
Aの身に何が起こっても、すぐにAの居場所が分かるように。





｢お前はなんで、それでも俺を選んでくれる？｣





それで守れた気になっていた。
Aのことを守るのは、この先もずっと俺だけだと思ってた。





｢…お前を守ってやれるのは、もう俺じゃないだろ。｣

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