私の胸の鳴る理由(1) (ページ5)

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Aside

昼間には肌が日に照らされて暑いくらいだったのに、午後も遅い時間になると、海から渡ってくる潮風に頬ひんやりと撫でられる

長『･･･泣きたかったら泣けば？』

数歩後ろを歩く泰広くんがそう言った

「泣かないよ･･･」

前を向いたまま笑って答える

長『平気だよ。俺からはなーんも見えてないし』

変な気の使い方･･･

「なにそれ...笑」

長『俺、根っからの紳士だからさ』

ちょっとは心配してくれてるのかなって、いつもは女たらしの遊び人だけど、本当は優しい人なんだよね

「･･･片想いってわかってるからさ、一生懸命、友達に達しようって思ってるんだけど･･･やっぱり難しいね...笑」

無理矢理笑ったのが泰広くんにはバレちゃったみたい

長『片想いなんてカッコ悪くてしんどいこと、もうやめちゃえばいいのに』

「･･･そしたら、多分もっとしんどくなっちゃうもん」

長『え？』

後ろから足音が止んで泰広くんが立ち止まった気がした

私は振り返る

「“片想い”はやめられても、“好き”はやめられないよ」

長『･･･ふ〜ん』

泰広くんは興味なさげに、大きな伸びをして歩道の柵に背中で寄りかかった

長『俺、片想いとかしたことないから、わかんないや』

「ふふ笑、泰広くんってたまにほんっとムカつくこと言うよね」

長『あ、Aが怒るってことは俺相当なこと言っちゃった？』

私たちは顔を見合わせて笑った

泰広くんのおかげで、心の重しが少しだけ軽くなった気がした