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私たち二人に向けられたざわめきは担任教師が登場するまで続き、そこからの教室は何となく居心地の悪い場所となる。
私たちの席の位置関係が前後ということも災いして、自然と視線は集まりやすくなっていた。
それなのに、忍足君は休み時間毎に私の方に体を向け、わざとらしいくらいに馴れ親しんだ笑顔で話しかけてきて、時々私の髪や肩に触れた。こんなことにまるで免疫のない私は終始どぎまぎするばかりだったが、彼はどうってことない涼しい仕草を貫いていた。
当然、周囲の好奇心は私たちに集中した。
そしてお昼休みに入った途端、忍足君は「昼、一緒に食べよや」と言うが早いか、私の右手首をそっと掴んだ。
拒否するのも不自然なので素直に頷き、空いた手でお弁当袋を持つ。すると忍足君は私のそれを軽く取り上げ、片手で簡単に自身の分と合わせて二つのお弁当袋を掴んだ。
壊れ物を扱うかのような繊細な温もりで右手首が引かれてゆく。
いつも一緒にご飯を食べていた数人の友達に断りを入れ、その子たちからの冷やかしの声を振り切って教室を出た。
彼に引かれるがまま、階段の屋上手前の踊り場まで来た。ここは、以前彼が私に例の交渉を持ちかけた場所だ。
解かれた手首を撫でた空気は、夏なのに冷たかった。
階段に並んで座る。忍足君にお弁当袋を手渡された。
互いに昼食を広げて、いただきますと手を合わせる。
彼が何か言うより先に私は聞いた。
「今朝、なんであんな言い方したん？」
「え？ ああ……その方が何かと都合ええやん。ああやって、目立つように言うた方が、周りにも広まりやすいやろ」
忍足君は私の方を見ずにそう答えた。
「せやけどあからさま過ぎるっちゅうか……それに、やたらと距離近いし」
声が尻すぼみになって俯く私を、忍足君が覗き込んでくる。フッ、と小さな笑い声が聞こえた気がした。顔を上げると、そこにはいつもと変わらぬ涼しい顔の彼が居て、ようやく目が合った。
「こういうんは、大袈裟な方がええねん。形から入るんが大事やねんで」
「そのために、デートもすんの？」
「恋人らしいこと何もせんと、『付き合うてます』っちゅうんはおかしいやろ？」
「それはそうやけど……わざわざほんまにデートせんでも」
「口裏合わせだけやったら、絶対にどっかでほころびが出んで。実際の共通の思い出は持っとかんと」
「そんなもんなんかなぁ」
私は忍足君の視線から逃げ、お弁当の卵焼きを口に放り込んだ。
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megumi(プロフ) - トモキさん» コメント、ありがとうございます！感情移入して頂けて嬉しいです。最近多忙を極めるため、なかなか更新出来てませんが、必ず最後まで書き続けます。 (8月28日 19時) (
レス) id: e6a6c10801 (このIDを非表示/違反報告)
トモキ - 「結局のところ、これがしたいというよりも、隣に好きな人が居るということが一番大切なことだと気付く。」という言葉からすごく夢主さんの気持ちが伝わりとても感情移入してしまいました。続き楽しみに待ってます。 (8月20日 22時) (レス) @page16 id: be68aea6b3 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - 桃花さん» 応援メッセージ、ありがとうございます！とても励みになります(◡ ω ◡)頑張って執筆します♪ (2023年4月20日 21時) (レス) id: c1e2bcbffd (このIDを非表示/違反報告)
桃花(プロフ) - 更新待ってます！(*＾▽＾*) (2023年4月20日 16時) (レス) @page1 id: 45cbc35a1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2021年10月1日 17時
