詰まって溢れて ページ6
「映画部に入ったときのことで、今更なんやけど」
Aが思い出したことというのは、紫子の言っていた"優しい男子"という単語だった。
自分の入部についてあらかじめ顧問に伝えてくれたのは、小石川だと思い込んでいた彼女は、彼に礼を言わなければと思ったのだ。あれから半月も経ってしまっているが、だからといって礼を憚るのは自身の主義に反した。
「あの時はありがとう」
"優しい男子"などという話は伏せた上で、その時のことを話した。
しかしここまで言った後も、小石川は心当たりのないような顔をした。
Aは首をかしげた。そしてこの話の通じない一方通行の空気に、急に恥ずかしくなって、顔の前で手を横に降りながら早口で言った。
「ごめん、忘れとるよな。とりあえず、ありがとうだけ受け取っといて」
穴があったら入りたい、まさにそんな気分。彼女は髪がふわっと浮くほどの速さでしゃがみ込んで雑草を次々に抜きながら、あの時すぐに礼を言わなかった自分を呪った。
一方隣の小石川は佇んだままで、膝くらいの所で可愛らしくしゃがんでいる姿を哀しく見下ろした。そして一息吸い込んだ後、ゆっくりしゃがんで一度項垂れてから前を向いた。
「それたぶん俺とちゃうで……きっと、謙也やわ」
それは少しよそよそしい言い方だった。
「え？」
小石川の遅れた反応にAは思わず聞き返す。彼の言い方に棘を感じたのも気になった。
「せやで、礼は謙也に言うてくれ、な」
「あ、うん。分かった」
どうして小石川がそれを知っていたのか、問いたい気持ちは口を突きそうだったが、Aはこの短い返事だけで口を噤んだ。なぜなら、小石川がこの話題に関して口を開いてからここまで、一度も彼とは目が合わなかったからだ。
その後、二人は残りの作業を終えた。どことなく息が詰まるような違和感のある時間だった。倉庫へ道具を戻した時、昼休み終了の予鈴が鳴った。
「あんな、聞きにくいんけど、もしやこっしーって謙也くん苦手？」
Aはおずおずと聞いた。以前から謙也に関する彼の態度が気になっていた。
小石川は突然歩みを止めて、真剣な目でAを見た。
「好きや」
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じゃこ(プロフ) - お返事ありがとうございます！！もっと言葉にできれば良かったのですが、、そう言ってもらえて嬉しいです。はい、もちろんです！楽しみにしています！！！！陰ながら応援させていただきます。 (2020年4月24日 23時) (
レス) id: d1fadf4aa0 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - じゃこさん» こちらこそ、いつもお読み頂きありがとうございます！加えてとっても素敵なコメントに感激いたしました！未熟な私ですが、じゃこさんに幸せを与えることができたなんて…作者冥利につきます。これからも更新頑張らせて頂きますので、お付き合い願えたら嬉しいです。 (2020年4月24日 9時) (レス) id: 5c141d606b (このIDを非表示/違反報告)
じゃこ(プロフ) - 更新いつもありがとうございます！上手く言葉にできないのですが、とても綺麗な文で読むと幸せな気持ちになります。四天宝寺のこと夢主ちゃんが織りなす話を楽しみにしてますこれからも頑張って下さい！…初コメ失礼しました。 (2020年4月24日 0時) (レス) id: d1fadf4aa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2020年2月2日 21時
