傷つけても謝れない ページ32
小石川の見えない表情が推し量れなて、Aは少し怖かった。掛け布団を顎まで引き上げて彼の続きを待つ。ちょっとした沈黙が驚くほど不安を煽った。
影になって見えない彼の表情を何とか伺おうと首を傾けていると、その顔が急にこちらを向きAは焦って勢いよく元の位置に頭を戻した。見えた彼の顔は笑顔だった。
「なんやったっけ、忘れてしもた。また思い出したら言うわ」
何かを隠しているような硬さを感じる彼の微笑みは、その言葉が嘘だということを伝えている。でも、聞かないでと言われているような気がする。
「ごめん」
Aはその一言だけを紡いだ。何に対してなのか、自分でも分からない。ほとんど無意識に出た謝罪だった。何かを無理矢理に押し込んだ小石川の顔を見ると、胸が締め付けられて苦しかった。
もっと早く聞けなくてごめん。何を隠しているのか分からなくてごめん。そんな苦しい顔をさせてごめん。そんな言葉に似た様々な罪悪感が束になって込み上げ、口から漏れた一言だった。
「せやから謝らんといて」
そしてそう念を押した彼の言い方は今までで一番悲しそうだった。Aは、また彼を傷つけてしまったと唇を噛んだ。
そんな時、戻ってきた白石が扉をガラリと開けた。彼は微かに重くなっている空気を知ってか知らずか、そのまま流れるように小石川にこう伝えた。
「小石川、Aさんの持ち物と鞄持ってきたってくれ。早退やわ」
「お、おお分かった。A、机の中いろてもええか？」
結局小石川に何も聞けなかったどころか気まずくしてしまったと後悔しながら、彼に「うん」と短い返事をして目を伏せた。
入れ替わりで今度は白石が傍に来る。小石川とは違い、丸椅子を持ってきてそこに座った。
何故わざわざ近くに来るのだろうとAが戸惑い目を合わせられずに居ると、静かにこう聞かれた。
「何かあった？」
鋭い彼はやはり気づいていたのだ。「何も」と小さい声で答えながらため息を吐き、そして感じが悪くならないように愛想笑いで取り繕う。
すると彼がやや呆れたように、でもとても優しい口調で言った。
「Aさんは頑張りすぎや」
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じゃこ(プロフ) - お返事ありがとうございます！！もっと言葉にできれば良かったのですが、、そう言ってもらえて嬉しいです。はい、もちろんです！楽しみにしています！！！！陰ながら応援させていただきます。 (2020年4月24日 23時) (
レス) id: d1fadf4aa0 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - じゃこさん» こちらこそ、いつもお読み頂きありがとうございます！加えてとっても素敵なコメントに感激いたしました！未熟な私ですが、じゃこさんに幸せを与えることができたなんて…作者冥利につきます。これからも更新頑張らせて頂きますので、お付き合い願えたら嬉しいです。 (2020年4月24日 9時) (レス) id: 5c141d606b (このIDを非表示/違反報告)
じゃこ(プロフ) - 更新いつもありがとうございます！上手く言葉にできないのですが、とても綺麗な文で読むと幸せな気持ちになります。四天宝寺のこと夢主ちゃんが織りなす話を楽しみにしてますこれからも頑張って下さい！…初コメ失礼しました。 (2020年4月24日 0時) (レス) id: d1fadf4aa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2020年2月2日 21時
