素直になるということ ページ23
紫子の答えがただ単に隣に座る生徒へと向けただけのものではないことを、その儚い横顔が伝えていた。
先生もきっと同じ痛みを抱えているのかもしれない、とAはまた合わなくなった彼女の瞳が揺れるのを見て感じた。何となく自分が今何か言うのは違う気がして、顔を前に向け先生の次の言葉を待つ。斜め前の方で熱気を放つコートを見れば、観客の隙間から覗く姿が胸に強い風を送った。
お茶を一口飲んで、未だ落ち着かない気持ちをどうにかしようと深呼吸してみる。そんな時、先生の次の言葉が隣からゆっくりと流れた。
「辛くかったり嬉しかったり忙しいのも、遠くに感じてため息が出るのも、急に泣きそうになるのも、苦しくて好きになったことを後悔するのも、一生懸命にその人を好きだからなの」
先生の言葉が素敵な意味だと分かるけれど、Aは自身に当てはめることはできなかった。
「私は……自分の気持ちに自信がありません」
生徒の意外な返事に紫子は「自信？」と首を傾げた。
「何度か恋はしたはずなのに、こんなのは初めてで。今までは人を好きになっても、気持ちが不安定にならないように出来ていました。でも、今はどうしたらいいか分からなくて」
これを恋というならば、現実世界で経験したはずの恋は何だったのか。自分は人を本気で好きになることを知らない人間で、実は今の気持ちも"好き"とは言えないのではないか。
初めて経験する気持ちと過去の苦い記憶がAの不安を煽っていた。
「それに、本当に彼は全く違う所に居るので、好きになる資格が私にはないんです」
思考が悪い方にばかり向かう。でも、この想いを意思の力で消す方法は無く、やはり思い悩むことしか出来ない。
Aはそこまで話して、口を閉じた。答えの無いことを吐露したと分かっているが、先生なら何か救う言葉をくれるのではないかと期待していた。
紫子の手がAの背中に触れる。
「好きって気持ちに資格も自信も理由もいらないわ。自分の気持ちに素直になったらいい。不安定でもいいの」
「ありがとうございます」
ついに涙がAの頬を伝った。今までの自分にも答えを与えてくれた気がしたからだ。
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じゃこ(プロフ) - お返事ありがとうございます！！もっと言葉にできれば良かったのですが、、そう言ってもらえて嬉しいです。はい、もちろんです！楽しみにしています！！！！陰ながら応援させていただきます。 (2020年4月24日 23時) (
レス) id: d1fadf4aa0 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - じゃこさん» こちらこそ、いつもお読み頂きありがとうございます！加えてとっても素敵なコメントに感激いたしました！未熟な私ですが、じゃこさんに幸せを与えることができたなんて…作者冥利につきます。これからも更新頑張らせて頂きますので、お付き合い願えたら嬉しいです。 (2020年4月24日 9時) (レス) id: 5c141d606b (このIDを非表示/違反報告)
じゃこ(プロフ) - 更新いつもありがとうございます！上手く言葉にできないのですが、とても綺麗な文で読むと幸せな気持ちになります。四天宝寺のこと夢主ちゃんが織りなす話を楽しみにしてますこれからも頑張って下さい！…初コメ失礼しました。 (2020年4月24日 0時) (レス) id: d1fadf4aa0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2020年2月2日 21時
