あなたの母�� ページ47
あれは三年前、たまたま夫に頼まれごとをして、会社に届けに行った日だった。
自分が愛しているからいい、彼の愛がなくても傍に居られるならいい、いくらそう言い聞かせても、結婚生活への不満は積もる。
この結婚、実際は自分のエゴだった。酷く傷付いた彼を放っておけなかったのは確かだが、それ以上に自分が彼を手放したくなかった。
彼の愛が消えたのは冷めたからではなく、予想外の出来事によって突然壊されたから。あの出来事がなければ、私達の幸せは続いていた。このまま別れるなんて許せなかった。
一緒に居れば、いつかまた愛される日がくるはずだと信じて、結婚を強いた。
けれど、そう上手くはいかず、どこを見ているのか分からない彼の瞳に落胆する毎日だ。
最近では自分の夫への愛情すら分からなくなってきていた。
演技で塗り固められた毎日は、あれ程にまで強かった愛も簡単に見えなくしてしまう。
「もしもし？ 今、会社のロビーに来たわ」
短い電話をして夫を待つと、彼はすぐにやって来た。
「ありがとう、悪かったね」
私を労うように、背中に軽く彼の手が触れる。嬉しくも切ない。
「いいのよ。お仕事、頑張ってね」
いつものように良妻を装って、柔らかい微笑みを投げて見送った。
短いため息をその場に落として、微笑みを崩さぬように出口に向かおうとすると、清掃員の中年女性と進路がぶつかってしまった。
「すみません」
軽く頭を下げて立ち去ろうとした時、その女性の声で止められた。
「いえ、こちらが悪かったんです。ところで、先程の方は旦那様ですか？」
「え、あ、はい」
突然の質問に戸惑っていると、笑顔で見つめられていることに気付く。
「何か……？」
今度はその視線に戸惑い、訝し気にそう聞くと、思ってもみない答えが返ってきた。
「あなた、いい奥さんですね」
報われずに水底に沈んでいた気持ちが、すくい上げられたような気がした。
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megumi(プロフ) - いなすらさん» ありがとうございます！ご期待に沿えるよう、頑張って執筆します(^^) (2019年5月22日 18時) (
レス) id: 04e98a2c19 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - めぐみさん» 誤字でしたか(笑)大丈夫ですよ！続き楽しみにしております((｡´･ω･)｡´_ _))ﾍﾟｺﾘﾝ (2019年5月22日 17時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - いなすらさん» いなすらさん、ご指摘ありがとうございます！誤字です、申し訳ありません。すぐに訂正いたしますm(__)m (2019年5月22日 17時) (レス) id: a2b7118433 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - 作品名、幸せだからいになっていますが、誤字でしょうか？意図的なものではないと思いますが、そうだったらすみませんm(*_ _)m (2019年5月22日 15時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年5月21日 5時
