決意は心の中に ページ34
はらはらと流れる涙を拭うことなく、夜道を歩き、終電に乗る。
つくづく自分が嫌になる。期待していたこと、別れる勇気の無いこと、隆を傷付けてしまったこと、自分の嫌な所ばかりが頭に渦巻く。
こんな夜は、同居人に対する苛立ちも溢れ出てくる。独りになりたい、あの家に帰りたくない、だけど私は帰る義務に縛られている。ここから逃げる勇気のない自分にも嫌気がさす。
そんな思いも知らずに私を運ぶ無慈悲な電車に揺られて、スカートに染みを落とし続けた。
翌朝、腫れた目を擦りながら目覚め、淡々と家事をこなして大学に向かう。
研究室に入れば、今日は由貴が来ていた。
「何かあったでしょ、あの人関連で。」
これだけ酷い顔をしていれば、私の状況を知っている彼女には簡単に分かってしまうのだろう。
「……うん。でも、それだけじゃないの。」
一人で抱え込むことが耐え切れず、昨日のことを話した。全て話し終えると、口を閉じていた彼女が一言、私に聞いた。
「Aはどうしたいの?」
由貴らしい答えだと思った。不必要な同情はしない。
ふと、同情という言葉に奥さんを思い出す。
「どうしたいんだろ……。」
物憂げに呟く私に由貴は、ため息交じりに言及した。
「もうAの中には答えがあると思うよ。奥さんから電話があった以上、ゆっくり悩んでもいられない状況だし、早くその答えに向き合わないと。」
確かに私の中には答えがある。きっとずっと前から心の底にあった。
朝倉さんを愛している。
だけどそれが故に、未来の見えない彼と一緒に居るのは辛い。
「うん、そうだね。ありがとう。」
小さく頷いて前を見る。
私は一人で立たなければならない。
「朝倉さんと別れたい。」
初めて口にした言葉。その瞬間、彼への愛が哀しみに変わってゆく。物語の終わりの気配を静かに見守る。
あれだけ踏み出せなかったのに、決意したのには大きな理由があった。
それは朝倉さんの誕生日。
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megumi(プロフ) - いなすらさん» ありがとうございます!ご期待に沿えるよう、頑張って執筆します(^^) (2019年5月22日 18時) (レス) id: 04e98a2c19 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - めぐみさん» 誤字でしたか(笑)大丈夫ですよ!続き楽しみにしております((。´・ω・)。´_ _))ペコリン (2019年5月22日 17時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - いなすらさん» いなすらさん、ご指摘ありがとうございます!誤字です、申し訳ありません。すぐに訂正いたしますm(__)m (2019年5月22日 17時) (レス) id: a2b7118433 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - 作品名、幸せだからいになっていますが、誤字でしょうか?意図的なものではないと思いますが、そうだったらすみませんm(*_ _)m (2019年5月22日 15時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2019年5月21日 5時