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同情 ページ31

夢が覚めて体を起こせば、時計の針は午前二時。隣で聞こえる恵美さんの寝息で、犯した罪は現実だと分かる。

 昨夜、俺は何に飲み込まれたのだろうか。愛情なのか。あの時、確かに俺は自分に湧き上がる感情を愛情だと表現した。だが、熱が落ちた今、そう言い切れる自信がない。結局は同情だったのかもしれない。恵美さんは俺のことを、何として受け入れたのだろう。

 どちらにしろ、越えてはならない一線を跨いだことに変わりはない。罪悪感が体中を走り、彼女の隣に居られなくなった俺は寝室から移動し、ソファーに体を預け再度瞼を下ろした。



「……さん、隆さん。」

 二時間ほど眠っただろうか、柔らかい声と肩に振動を感じ、薄っすらと瞼を開ける。視界に飛び込んできた恵美さんの姿に驚き、急いで体勢を直して座る。

「ごめんなさい、こんな時間に。少しお話しませんか。」

 俺はぎこちなく頷いた。

「隆さん、昨夜はすみません。混乱させてしまって。」
「え?あ、あの、俺の方こそすみませんでした!」

 頭を下げ、膝の上で拳を震わせる。すると彼女が、あなたは謝らなくていいです、と俺の頬を包んで顔を上げさせて微笑む。

「私が悪いんです。あなたに愛情と同情を混同させてしまった。」

 実際、あれは愛情だったと言い切れなくなっていたので、言い返すことが出来ず、ただその続きを待った。

「私を抱いているときの瞳、同情の色でした。それはあなたにも向けられているようだった。自分を哀れんでいるような……。これは推測ですが、もしかして誰か愛する人が居るんじゃないですか?何かを忘れようとしている感じだったので、想いを忘れたいのかと。」

 それは見事に図星だった。大学の時ずっと好きだった人が居た。伝えられぬまま卒業し、今は二年程連絡をとっていない。だけど、その名前を忘れられず今に至る。
 恵美さんに対する感情を愛情と捉えることで忘れようとしたのかもしれない。

「もう会うのは最後にしましょう。隆さんの愛情、大切にして下さい。その人に会えるといいですね。」

 ここまで同情を下さりありがとうございました、と彼女は出て行った。部屋には罪悪感と再燃した恋心が残された。

 三年後、消えぬ恋心を終わらせるため、Aに電話を掛けた。

苛立ち→←堕ちてゆく



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設定タグ:オリジナル , 名前変換 , 不倫   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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megumi(プロフ) - いなすらさん» ありがとうございます!ご期待に沿えるよう、頑張って執筆します(^^) (2019年5月22日 18時) (レス) id: 04e98a2c19 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - めぐみさん» 誤字でしたか(笑)大丈夫ですよ!続き楽しみにしております((。´・ω・)。´_ _))ペコリン (2019年5月22日 17時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)
めぐみ(プロフ) - いなすらさん» いなすらさん、ご指摘ありがとうございます!誤字です、申し訳ありません。すぐに訂正いたしますm(__)m (2019年5月22日 17時) (レス) id: a2b7118433 (このIDを非表示/違反報告)
いなすら(プロフ) - 作品名、幸せだからいになっていますが、誤字でしょうか?意図的なものではないと思いますが、そうだったらすみませんm(*_ _)m (2019年5月22日 15時) (レス) id: 4bc43cc691 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:megumi | 作成日時:2019年5月21日 5時

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