葛藤 ページ17
どうしよう、と戸惑う声で体中溢れている。
ちゃんと別れられたと感じていた。あれから連絡は無かったし、彼はもう私の事なんか考えていないと思っていた。それなのに、どうして今また……。
会いたい、会いたいに決まってる。
寂しさを埋めようと縋った彼を、次第に愛していった。寂しさと愛の違いなんて無いと人は言うかもしれない。でもあれは私にとって愛で、今も消えていない。
必死で押さえつけて過ごしてみたけれど、彼のことを一つだって忘れられない。携帯に映ったその名前を見ただけで、胸が震えて、辛かったことも忘れてしまえるような気がして、彼との思い出や"好き"という気持ちが溢れて止まらなくなる。
受話器を取るかどうか、ボタンに手を添えながら心拍で震える指で迷う。息が苦しくなって、こくりと唾を飲み込んだ。
鳴り続ける着信音に、切れないでと我儘を思う。もう少し、私に時間を下さい、と声にならない声で呟く。
立ち止まって涙をこぼしている私を、すれ違う人が訝しげに見ては通り過ぎていった。
本能だけで動けばこのボタンを押すだろう。けれど、それがダメなことだと理性が分かっている。
不倫相手の私は去らないといけないと決心して、あんなに頑張って別れたのに。そしてなによりも、彼の愛する人は奥さんだけだから、もうその心を求めることはできない。
でも、胸の中に鮮明に蘇るのは彼の全てで、それを感じたくて、切なくて。
「あ……そんな!切れ、ちゃった……」
さぁっと、熱くなった体が冷めてゆく。その代わりに私の体を落胆と後悔が支配した。
たったこれだけの出来事が、私にとってはとても心を揺さぶる大きな出来事で、この数分で魂の全てが疲弊した。
のろのろと足を引きずった後、由貴の部屋に着いたときは、携帯を両手できつく握り締めながら倒れ込むように眠った。
せめて夢で逢いたい。夢の中では、ただの男女であったらいいのに、そんな期待を抱きながら。
でも、そう思う時には出てきてくれなくて、望んでいない辛い夢ばかりが続いた。
目覚めると、汗をぐっしょりと吸った服がとにかく気持ち悪かった。
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megumi(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます。深く感じ取って頂けて、作者として本当に嬉しいです。たかが恋、されど恋……愛や恋は人生を大きく変えたり、辛かったり哀しかったり、幸せを与えたり、影響力が強いですよね。こちらこそ、読んで頂きありがとうございましたm(__)m! (2020年2月12日 8時) (レス) id: 0880e9be07 (このIDを非表示/違反報告)
楓 - 叶わぬ恋って本当に辛いの分かりますが、不倫はないので本当に夢主ちゃんは辛かったのだな、と思いました。何が正解で何が不正解なのかなんて誰にも分かりませんが、自分の決意した己が答えを見いだすことが正解なのだと私は思いました。ありがとうございました。 (2020年2月12日 3時) (レス) id: da7e11619f (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます!この頃仕事でバタバタしていたので、更新頻度が落ちていましたm(__)mこれからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年11月26日 7時) (レス) id: 38c83e71ca (このIDを非表示/違反報告)
あ - 連続更新嬉しいです!!頑張ってください! (2019年11月25日 23時) (レス) id: 42f53dea12 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます、励みになります!好きになって下さって嬉しいです( *´艸`)更新頑張ります! (2019年10月19日 20時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月26日 23時