桃色 5輪目 丸井side ページ6
-丸井side-
「そういや丸井先輩！ 俺、見たっスよ！」
急に何を思ったのか、赤也が騒ぎ出した。
いったい大きな声ではしゃぐほどの何を見たというのか。またこいつが勝手に先走ってるだけだろうと、適当な相槌を打ちながら、まるで気の無い声で何を見たのかと聞いた。
けれど、赤也から飛び出した返事に頭を殴られ、やべぇ、と内心で騒ぐ。ギクッと効果音が漏れるほどに背筋が固まり、冷や汗が垂れる。
こいつに見られたなんて、頭が痛い。他のレギュラー陣に見られるより被害は少ないが……赤也は純粋で、騒ぎすぎるという意味で厄介だ。
隣で冷やかし続ける赤也を沈めることが出来ず、頭を抱える。
けれど今回はその純粋さが災いしたようで、後に不意に発せられた言葉は、俺を最高潮に苛立たせた。
「でも、意外っス。超平凡って感じだったし……、丸井先輩ってもっと可愛くて、明るい感じの子がタイプだと思ってました。あー！ まさか、食べ物に釣られたんスか？」
悪気はないと分かっている。でも、許せない。無意識に拳を握り、わなわなと震わせる。
何も知らないくせに、簡単にAのことを言うな。
それに、俺を何だと思ってんだよ。食い物で恋に堕ちるなんて馬鹿げたことがあるわけねぇよ。
そんな軽い気持ちであいつを好きなわけじゃねぇんだ。
Aは、俺にとって一番なんだ。俺は一番あいつのことを知ってる。
誰よりも優しくて、頑張り屋で、それだから必要以上に我慢して、無理に笑って、見えないところで泣いて。
弱そうに見えて芯があって、でもやっぱり弱くて。俺の腕にくるまれるあいつは、小さくて温かくて。
心を許した相手に見せる笑顔は、誰よりも柔らかくて。
Aは、誰よりも綺麗な女の子なんだよぃ。
「先輩？」
神妙な空気を感じとったのか、赤也は不安気に俺の顔を覗く。
「……おい」
驚くほど低い声が出て、隣で後輩が怯えたのを感じた。
自分の中の攻撃性が顔を出しかけた時、すかさずジャッカルが止めた。
「赤也！ あの子はすごく良い子なんだぞ！」
止めてくれて良かったと思う反面、なぜお前が言うんだ、という気持ちで睨んだ。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
