水色 17輪目 ページ41
母の話を聞いた後はずっと上の空で、勉強も手に付かないし、かと言って寝ることも出来なかった。
何をするわけでもなく、ただベッドに寝転んで天井を見つめる。
これからどうするのが母の言う自分の気持ちに素直になれる道なんだろう。でもそれを見つけたところで、果たして後悔しない道なのだろうか。
なら私は、一番誰かを傷付けない選択がしたい。それは逃げでもあると知っている。誰かを傷付けることを恐れながら、自分が傷付くことも恐れている。
私がこの想いを伝えたところで、その結果はもう目に見えている。ただ、伝えるかどうかの自己満足。そんな安い自己満足の為に、あずさを傷付ける道が正しいとは思えない。
「やっぱり、もうこのままでいい」
ブン太や母の声が頭に繰り返されたけれど、そう決断して呟き、そのまま瞼を閉じた。
「ずっと、好きだったの――」
不意に漏れた心の中の秘密。
目の前の人は何も言わない。
誰の香りか分からない。すごく安心する温もり。
背中に回された腕が私の鼓動を抱き締めている。
私も抱き締め返そうとして、ためらう。
「ごめんなさい」
自分の腕でその人の胸を押すけれど、本心は離れたくないと叫んでいる。
すると途端に消えゆくその人の姿。
「待って！」
必死に呼び止めるけれど、もうその人は居なかった。
「誰……？」
最後の台詞を現実に吐き出しながら目覚めた。時計を見ると、まだ夜中の二時だった。
もう一度寝ようにも、眠れないので、キッチンに下りて水を飲み干した。
何だかさっきの夢が妙に引っかかって、まだその世界に居るみたいで、現実という実感がない。
今眠れば、あの続きが見られるだろうかという微かな期待を抱きながら、再度眠りに落ちた。
結局、続きは見られず、見られたものはずっと同じ場面の繰り返しだった。
心なしか頭痛のする頭を抱えて登校すると、ブン太やあずさに少し心配されてしまったので、懸命に夢の残像を振り切ろうとした。
ふと花壇を見下ろすと夏前には咲いていたマーガレットの花弁は見当たらず、寂しい気持ちになった。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
