水色 15輪目 ページ39
-Aside-
あの真剣なブン太の目が頭から離れない。
あれだけ強い想いを私のような人間に向けてくれていたのに、それに答えられないという、どうしようもない息苦しさがずっと残る。
ブン太はどれ程の苦しさと共に、私に幸村君への気持ちを大切にしろと言ったのだろう。
それなのに、何ふり構わずその道には走れなくて、ブン太の言葉や想いを踏みにじるように、恋を捨てて将来の夢だけを選ぶいう決断をした。強い意志ではなく、諦めからの決断だったため、そんな自分が嫌になって、本当にこれで良かったとは胸を張れない。
「Aー、早く下りてきなさい」
いつまでもこうして自室にこもってはいられない。何かが絡みついて離れない足を引きずって、両親の居るダイニングへ向かう。
「お母さん……え？」
このままではご飯を食べる気も味もしないので、重荷を一つでも減らそうと、テスト結果について口を開こうとすると、母に無言で小さく首を振られて、その先を制された。
疑問に思いつつ席に着こうとすると、「後で二人で話しましょ」と耳打ちされ、私が言いにくそうにしていたのに勘付いていたのかと、小さく息を吐いた。
その後、やはり味のしないご飯を食べ終えてお風呂を済ませ、いつもより早く自室に入ると、少ししてから母が入ってきた。
「邪魔した？」
「ううん」
取り掛かっていた問題集から手を離し、ベッドに座った母に向き直った。正直、今は何も手につかなかったから、邪魔もなにもない。
「……お母さん」
夕飯の前に話そうとしたことをもう一度口に出そうとすると、「知ってるわ」とまた遮られた。
「テスト結果、出たんでしょう？」
「うん、それがね……」
優しい声で問いかけられたけど、やっぱり怖気づいてしまって、下を向く。
「良くなかったことは、最近のAを見てたら分かるわよ。お母さんを舐めないで！」
私の緊張を解くためか、母はおどけた調子でそう言った。全てお見通しだったようだ。
母の声や表情に少し安心して、やっと前を向いて目を合わせると、にっこりと笑顔を向けられた。
「何に悩んでるのか、同じ女だから大体分かるけど、後悔しないようにしなきゃだめよ」
実体験を含んだような言い方により、その言葉が妙に胸に迫った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 32人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
