水色 14輪目 親友side ページ38
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邪魔、と言われた気がした。
事が終えたら、もうこの関係は終わり？
仁王君の友達になれていたって、自惚れていた。
あたしが勝手に付き合わせていただけだったんだと思うと、ごめんねよりも悲しいって気持ちが断然勝っていて、どうしよう、なにこれ、なんでこんなに泣きそうなの？
「また泣いとるんか」
このタイミングで聞かないでよ、堪えきれなくなる。
「泣いてない」
声を震わせないように、精一杯我慢できたと思った。
「ほう、」
「え？」
一瞬だった。
上半身を翻した仁王君の両手が耳の横に置かれ、視界に映るのは綺麗な顔立ちと背景の青空。驚く暇もなかった。
「俺に、嘘は通用せんぜよ」
不意打ちによって緩んだ涙腺から、堪えていたものが零れ落ちた。
それを仁王君は滑らかに左手の親指で拭き取りながら聞いた。
「誰の為に泣いとる」
君の為、とは言えない。言えるはずがない。だって、それを口に出したら、かろうじて繋がっている細い糸が切れてしまう。
さっきの突き放すような言動とは矛盾するこの行動。きっと仁王君はあたしを試している。ここで反応したら、切り捨てられる。心地よかった時間の終わりだろう。
「また幸村か」
それなのに、どうしても、ときめきが胸に溢れる。
いつからだったのか、今になって振り返っても分からない。揺れ始めたのはいつからか、徐々に別れの切なさが薄くなっていたのはいつからか。それを見ないようにしていたのは、いつからだっただろう。
なんだ、あたしは、精市を責められないじゃないか。
今気付いてしまった事実に、つくづく呆れた。
どうやったってもう止まらなくて、認めざるを得ない。
あたしは、仁王君が好きになってた。
けれど、それを伝えてしまえば、限りなく距離の離れる関係。恋とはこんなに難しいのか。ときめきが諦めに変わってゆく中で、ため息のような笑いをこぼすと、声が降ってきた。
「気を付けんしゃい」
何となく、近くなる彼の顔を呆然と眺めた。
与えられたのは、優しすぎる唇と重ならない想い。
やめて、好きでもないくせに、そのキスは心を抉る。
再び流れた涙は止まらなくて、彼を押し上げた。
けれど、いとも簡単に離れた温もりに、また心を痛めた。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
