水色 13輪目 親友side ページ37
-あずさside-
精市と別れてから一か月半、四人の空気がどことなくギクシャクしている。皆、神妙な面持ちをすることが多くなった。
きっと、誰も悪くない。
けれど、あたしはそんなに出来た人間じゃないから、まだAや精市を責めてしまう時がある。そんな感情は理不尽だと分かるけれど、まだ精市を忘れられないんだ。
もしあの時こうしていたら、と後悔を未だに繰り返している。
もし、もっと早くに丸ブンの背中を押していたら。もし、Aが精市と関わる前に自分の気持ちに素直に向き合っていたら。もし、自らこの恋を手放さなければ。
そうしたら、今頃どうなっていたのか。こんなに苦しくなかっただろうか。彼の隣でずっと歩いていけたのだろうか。
丸ブンだって、早くAを攫ってくれれば良かったのに。Aからの返事を待っていないで、俺を選べ、と男らしく多少強引にでも引っ張れば良かったのに。
そしたらあたしと精市に別れは来なかったかもしれない……なんて都合のいい我儘を巡らしてみる。本当は、そんなことになっても、人の気持ちは操れないと分かっているんだけど、人の世のその事実から顔を背けたくなる。
以前のあたしは、こんなことを考えている自分が嫌で嫌で仕方なくて、まるで完璧なAの人間性に八つ当たりしていた。
でも今のあたしは、そんな感情から目を逸らさない。自分の全部を受け止められる。
そう思わせてくれたのは、紛れもなく屋上の彼で、まさに今その人が隣で空を仰いでいる。
少し前に、当たり前のように仁王君の横に座った。まだ何も話していない。
ふと顔を見れば、案の定、瞼を閉じていた。眠っているのか、起きているのか分からない。もしかしたら、あたしに気付いていないかも。
「仁王君、寝てるの？」
伺うようにそう聞いてみる。
返事の声が何も返ってこないので、寝てるのかと決めつけ、自分も地べたに体を預けた。
するとその直後に、仁王君は独り言のような呟きを低い声で発した。
「おまんは何でまだ俺の所に来るんかのぉ。もう用はないやろう」
「そんなつれないこと言わないでって」
ふざけたふりをして答えるけれど、ズキズキと大きくなる胸の痛みと、不安に押し潰されそうだった。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
