水色 12輪目 ページ36
「遅くなるといけねぇし、帰ろうぜ」と言ったブン太に続いて公園から出る。
家までの道、二人とも黙ったまま。
さっきまでのブン太の表情や声が胸に刺さって抜けない。彼の背中に届かない「ごめんね」を繰り返しながら歩く。
家までの道のりは短く、すぐに到着してしまった。
中に入りたいような入りたくないような、微妙な心情に表情を歪めた。
「ありがとう、でも、ごめんね」
精一杯の一言を定まらない視線と共に伝えた後、「ああ」という彼の短い返事を背中で受け止め、玄関に入った。
彼がその後少しの間、哀しい笑みで視線を落として、立ちすくんでいたのを私は知らない。
ドアの閉まる音に反応して、母がリビングから顔を出して「おかえり」といつも通りの優しい声で言う。それに対して、「ただいま」と出来る限りの作り笑いを浮かべて返事をし、階段を駆け上がった。
部屋のベッドに座り、ため息をつきながら項垂れる。ドクンドクンと鼓動が私を責めるように耳に響いている。
悪いことをした、もう少し待ってて、なんて無責任なことを言って。
ずるいことをした、自分の想いが消せないことを自覚しながら、ブン太にしっかり返事をしていなかった。
その上、私を好きだと言ってくれた彼に、私の好きな人を確認させてしまうなんて、私は酷い人間だ。
本当にごめんなさい、自分勝手な人間で。
想いを大切にしろ、と最後に言ってくれた言葉も守れそうにない。
あずさは、私のせいじゃないと言ったけど、それはきっと何かが隠されている。
私の幸村君への想いを知ってから、彼女はずっと戸惑い悩んだはずで、それが二人の仲に何か悪い影響を与えてしまったのは否めない。
そんな酷い"好き"を大切にする資格は私にはない。
何故、同じ人を好きになってしまったんだろう。
何故、隠しきれなかった、消しきれなかったんだろう。
「私って最低だ……」
ブン太も、あずさも、私のせいで傷ついてしまった。
つーっと涙が頬を伝って、ぽとりと膝に落ちた。
二人とも、こんな私を許してくれるだろうか。
まだ友達でいてくれるだろうか。
何度散っても、摘んでも、また咲く花。
その花弁は、また何度も雨を呼んで、孤独を纏う。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います! (2021年3月5日 18時) (レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます!楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました!沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です! (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月11日 22時