桃色 20輪目 ページ21
-Aside-
ブン太と恋人同士になったことをあずさ達に報告すると、祝福と共に、やっとくっついたか、という言葉が飛んできて、何だか気恥ずかしかった。
その後、すぐに夏休みが来た。部活を引退して、テニス部の最後の試合を応援して、それ以外はほぼ受験勉強で過ごして、気付けば新しい学期が始まった。
学校の生徒には少しずつ私達の関係が知れていって、たまにコソコソと話す声が聞こえたけれど、ブン太達の世代のテニス部の活動が終わっているのと、彼がいつも私の近くに居てくれるおかげで、嫌がらせは受けなかった。
「ごめんね、こんなデートしか出来なくて」
今の問題は、私が勉強に追われているから、普通のデートが出来ないこと。いつも図書館やお互いの家で勉強に付き合ってもらうのが、私達の日課だ。デートはおろか、帰り道に手を繋ぐくらいで、恋人らしいことをほとんどしていない。
「いいんだよ。Aと居られるし、それに、一緒にお菓子とか食べられるしな！」
けれど、そう言ってくしゃりと笑うブン太に、申し訳なさが吹き飛んで、いつもときめきだけが残る。
「……ありがとう」
「おう！ 俺も勉強しねぇといけねぇからさ」
「立海大への進級の？」
ブン太はそのまま立海に進むと思っていたから、何となしにそう言った。
でも彼は少し視線を泳がせて押し黙った。
「俺、立海には進まねぇ」
図書館からの帰り道、ちょっと遠回りをして歩き疲れて座ったベンチでのことだった。
「え！？ じゃあ、どこに……」
不安だった。彼がもっと遠くに行ってしまいそうで。
「お前と、一緒の大学に行く。もう先生にも伝えたし、家族も大賛成だったし」
「え？ 本当に？」
もしそれが本当なら嬉しくて、勉強ももっと頑張れる。でも、ブン太はそれでいいのかな。神奈川から地方の大学に離れて遠距離になることを、寂しく思っていた私の為に何かを我慢したのかもしれない。
「マジだって。俺がお前と一緒に居たかったし、お前の大学に興味あったし、何より俺の選んだことだから、何か余計な心配すんなよ」
どうして彼には私の考えることが全部分かっちゃうんだろう。
「おーい、また泣いてんのかよ」
体を捻って抱き留められた腕の中、ずっと彼の鼓動を聞いていたかった。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
