桃色 13輪目 ページ14
-Aside-
どうしてここまで幸村君が粘り強く関わってくるのか分からなかったけれど、ブン太を話の引き合いに出されたことで、結局彼に負けて教室に残ってしまった。
全部今までの経緯をブン太から聞いたと告白する彼に、なんだそういうことか、それならなぜ探るような言い方をしていたんだ、と内心ため息が漏れる。
それに、幸村君には関係ないじゃないか。
彼に対して初めて湧く反抗心に居心地が悪くなり、もう部活に行こうと思ったときだった。
自信を持っていい、そんな言葉が耳に流れ込んだ。
なぜ、どうしてそんなことが言えるの。それは本心なのか、慰めのためだけの偽りなのか。
何かが救い上げられるような、晴れるような、安心感に包まれたけれど、やっぱりそれはすぐに壊れて消えてしまった。
私なんかが自信を持っていいわけない。
ブン太にもう言うなと言われた、私なんか、という言葉を性懲りもなくまた唱えていることに呆れる。
私は幸村君の優しさを素直に受け取れるほど純粋じゃないから、彼が分からない。
何も答えずに黙りこくっていると、彼は更に諭す。
「自分の価値は自分が決めるんだ。他人からの評価よりも、自己評価が重要なんだと、俺は思うよ」
幸村君はそう思える素質を持っているからだよ、と心の中で捻くれる。
「私には無理だよ」
私には何もないから。幸村君のようには思えない。
そんな私の心中を察するように彼は答えた。
「俺だって、最初から自信に満ちていた訳じゃないさ。今だって時々、失ってしまうしね」
彼の完璧の下に、努力の塊があることは知っている。けれど、そのまた下には絶対的な自信があると思っていた。
彼が自信喪失することがあるなんて信じられない。
「幸村君は自信を失う必要なんてないのに」
あなたでも喪失するのに、私にどう自信を持てというの、という気持ちも入って視線が斜めにずれた。
「その言葉、君にそのまま返すよ」
ずれた視線を戻して彼に振り向けば、真剣な目に射抜かれた。
「俺はAをずっと羨ましいと思っていたよ」
なぜ、またそんなことを。
いよいよ彼が本当に分からない。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います! (2021年3月5日 18時) (レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます!楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました!沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です! (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月11日 22時