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桃色 12輪目 幸村side ページ13

「どうして、って言いたそうだね」

Aの驚いた表情はもう消えていて、また伏し目がちな影を帯びた表情になっていた。

「幸村く――」

「丸井が沈んでたんだ。Aにどうにかして欲しいんだけど」



 朝練での丸井は、目に見えて調子が悪く、やけに静かだった。それが、Aの様子とあいまって、やたら目についた。
 それで俺は「丸井、体調が悪いなら無理して練習に出なくていい。他のことで気が散ってるなら、今は練習に集中しろ」と注意した。頭の中では、ほぼ後者の理由で間違いないだろうと確信していたが。

 すると彼は少しばつの悪そうな顔をして、小さく謝った。その後、一瞬だけいつもの丸井っぽくなったけれど、またすぐに落ち込んで、どこか上の空の彼に戻ってしまった。
 
 そこで俺は練習の終盤に、丸井を誰も居ない部室へ呼んだ。

「わ、わりぃ、幸村君。何かぼーっとしちまってさ」

 そう言って彼は無理に笑うけれど、すぐ力ない笑いに変わってしまって、何か隠しているのはバレバレだ。

「俺が何も分からずに、丸井を呼んだと思うかい? Aのことだろう」

「え」

 そしてついに、観念した丸井は打ち明けた。



 その一部始終を聞いて、もどかしさを感じると共に、AらしいといえばAらしいなと思った。俺が少しでも何か力になれないかと考えた末、今この時間に至るというわけだ。

「私には何も――」

「ちょっと話さないかい?」

 この後もAの遠慮の言葉をことごとく遮り、放課後の部活前に少し話そうというところまでこぎ着けた。



 今日の授業も全て終わり、皆それぞれに散ってゆくクラスメイトが何人も俺を通り過ぎ、残るはAと俺の二人だけになった。

 この空間が落ち着かないのか、隣でそわそわしている、やっぱり俺の方を向かない彼女に話しかける。

「丸井から全部聞いてしまったんだ。ごめんね」

「そうだったんだ……」

 小さく消えそうな声でぽつりと返事をした彼女の瞳は、まだ暗いまま。

「自分を卑下しすぎなんじゃないかな」

「え?」

 くるりと首を回して向き直ったその表情には、自嘲、戸惑い、疑いといったものが混ざっていた。

「丸井とのことは関係なしに、普段からもっと自信もっていいと思うよ」

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設定タグ:テニプリ , 丸井ブン太 , 幸村精市   
作品ジャンル:アニメ
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います! (2021年3月5日 18時) (レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます!楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました!沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です! (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月11日 22時

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