高校3年排球部、東京から来た宮城出身セッターです。

第16戦：買い物 ページ19

梟谷、そして音駒とは、因縁深くも良好な関係だった。

虎浜学院に通い排球部に在籍していた頃、一年二年の夏では毎年行われることになった合同合宿が開催されていた。

そこで出会ったのが、梟谷と音駒だ。

生川や森然とも交流はあったが、やはり印象に残ったのはあの二校だった。

同学年のトサカヘッドやミミズクヘッドと言われる二人やほかの同級生、赤葦も梟谷へ入っていたため毎年顔を合わせ、互いに技術を磨き合ったのだ。

メル友だったりLINE仲間だったりと様々だが、個人的に仲が良い人もいて、自分的には嬉しい限りだ。









「おーい、Aー！」

「ん、何？恭介」

「うおぉっ！！ビ、ビビった……」

ム、失礼な。影が薄いわけでもないのに全く……

あからさまにムッとしてみせると、兄貴はすぐに謝ってきた。許すに決まってんじゃん……

「なんか用？」

「うん、今暇だろ？」

「いや、友達にメール返信すんのに忙しい」

「そこは暇だって言えよな……。ちょっと買い物行ってきてくんない？なんか玉ねぎと人参と白菜が足りん………」

マジかよ……。全部野菜じゃねぇか(汗)

「ま、まぁ良いけど…………」

「おー、助かるよ！この谷越えて、右曲がると坂があるからそこ下って行くと『坂ノ下商店』ってとこがあるんだ。ついでにみりんも買ってきてくれ」

店の人顔怖いけど結構優しいから、ビビるなよ！と玄関先で元気に見送られた。

ちっさい谷ひとつ越えて坂下りるってどのくらい時間かかるんだろう…







「うおお、ここか坂ノ下商店……」

思いの外20分位で着いた。これなら野菜も痛まないだろう。

「こんにちはー」

まさかとは思うが烏野の人達がいたら困るのでフードを被る。

この暑い日にフードなんて非常識通り越して犯罪者扱いされそうだが、もう関係ない。

「ん、いらっしゃい…………って、」

…………………………………え、嘘だろ

(うわあああぁあぁああ烏野のコーチだあぁあ！！！！)

油断した、モロに真っ正面から顔面を直視してしまった。白川A一生の不覚…←

「え！？白川、何でここにいるんだ！？知り合いの引っ越しの手伝いじゃ…ってか、この時間だと新幹線乗ってなきゃまずいんじゃないのか？」

明日月曜日だろ？と問われ、俺には逃げ道がなくなった。

むやみに偽れないこの表情筋と、窮地の時回ってくれない舌を持った俺は俗にいう『正直者』らしい。

どうやら、俺は真実を語る他に選択肢が無いようだ。

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