王の寵愛《青》 ページ3
崇高な陛下は誰も寄せ付けたことがないらしい。
そんな噂を聞いたのは、仕立て屋として王宮に出入りすることになった前の日。本当は畏れながらも採寸して、お体に合ったものをお作りしなくてはならないので、近くに寄らなければならないのですが。
「……っ失礼いたしますっ」
何人もいる侍従たちの間を案内されて、大きな扉をなんとか押して入った部屋には、長椅子が一つとキラキラとした金髪の男性1人きり。
安「………誰?入ってええとは言うてない。僕の時間を邪魔せんといて」
「っ…!そうですよね。何かの間違いと存じます。この処遇は何なりと…申し訳、ありませんでした」
中に居た人の顔を知っているわけではない。だけど言葉の端々から自分の首を飛ばすのは簡単な立場にいる人だと言うことはすぐにわかった。
恐怖をこらえ、ついさっき入った扉を後戻りしようと踵を返す。
安「…なぁ!その髪飾り、何処で買うたん?」
「何処って…蚤の市でございますが」
安「近くで見せて」
よくわからない申し出に困惑したけれど、髪を纏めていたバレッタを外して手渡せばそのまま手をとって長椅子に座らされた。
安「綺麗な加工やなぁ………………すまん、おれすぐ泣かしてしまうねん。言葉が足りんってよう言われるわ。きっと侍従長かなんかに雇われてきたんやろ?お嬢さんはなんも悪ないよ」
そう言われて、やっと自分が涙を流していたことに気が付いた。落ち着いた声でなだめられて、少しずつ緊張がほぐれてゆく。
「わたくし…陛下のお召し物を仕立てに参りました、Aと申します。バレッタをお気に召されたのであれば、差し上げたく」
安「いや、贈る女性もおらんわ〜(笑) たださ、ここに来る行商の宝石はちょっとデザインが古くて嫌やねん。これ作っとる職人紹介して貰われへんかなって」
「そんな、町の鉄工が作った物ですよ?」
安「ええね♪アンタも今までの仕立て屋の中では、一番若くて話通じるわ」
着たい服があんねん!おれが描いたやつ!と目を輝かせて仰った顔は、さっき初めて逢ったときとは全く違うものになっていた。
崇高な陛下は誰も寄せ付けたことがないらしい。改め、聡明な陛下は趣味の合う友人がおらず辟易していた。というのが本当の話。
部屋に入り込んできた謎の女性があまりにも綺麗で、追い出すつもりが思わず呼び止めてしまった、という事実は陛下しか知りません(笑)
100人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こあ(プロフ) - イオリさん» んだべー?消えてまったのです!!アレ即対応ありがとうございます♪ (2016年11月8日 7時) (レス) id: a127aff5ea (このIDを非表示/違反報告)
イオリ(プロフ) - うえっ?!横山さん消えてる(><)読んだやーん!またおっとこまえなん待ってまーす!アレも、もう少し待ってくださいね(笑) (2016年11月8日 6時) (レス) id: 3ec8398290 (このIDを非表示/違反報告)
こあ(プロフ) - みゆきさん» オッケーです!私好みになってしまいますが♪多目に投下しますね~☆ (2016年10月29日 23時) (レス) id: a127aff5ea (このIDを非表示/違反報告)
みゆき(プロフ) - 村上くんです。紫さんのお話を読んで『むふっ』ってなりました! (2016年10月29日 23時) (レス) id: c2567f5f2d (このIDを非表示/違反報告)
こあ(プロフ) - みゆきさん» お好みは誰でしたしょうか?いつでも教えてくださいねヽ(^○^)ノ (2016年10月29日 3時) (レス) id: a127aff5ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:こあ | 作成日時:2016年10月20日 2時