駅前奇想曲【青・∞】

#４３# ページ43

あまりに暇だから、釣りでもしてるか。


　そう思って立ち上がると、画面のギリギリ見えるところに小さな男の子が立っていて、服装がコロコロ変わっている。頭の上に"shota"って書いてある。え、もしかして……



本屋:章大くん？

shota:あ、間に合わなかったぁ、見つかった(笑)分かりやすいように前の服に似たのん探してたのに〜

本屋:新しく作り直したの？

shota:おん、本屋ちゃん言うてたやろ？嘘つくような奴とは友達になれんって

shota:おれな、もういい年こいたおっちゃんやけど、そういうのに囚われんと色んな人寄ってきてくれたらええなぁと思ってさ……女の子のアバターにしてみててん

shota:決してあれやで！出会い目的ちゃうで！！



　うーん。確かに、そういう風に言われたら反論できないけど。でも私悔しかったんだよね。ある程度仲良くなったんだから、本当のこと教えてくれても良かったじゃない？私…章大くんとのこと、本人に相談してたってことじゃん。めちゃくちゃアホじゃんよ。



　ゴツッ


安｢痛っ(笑)！｣



　ちょっとムカッときて、後ろに座った章大くんに後頭部で頭突きした。くすくす笑い声が聞こえて…こっち怒ってるんですけど！



本屋:ねぇ、私のこといつから知ってたの？

shota:うーん、どっから話したらいいもんかなぁ……………、打つのめんどくさ。ちょっと待ってて？

本屋:はぁ？



　初心者用のやっすいリュートを持ち出して、ポロンポロン自動演奏にした章大くん。データは持ち越せるのか、なるほど。




安｢初めてAちゃんに会ったのは、二年前やねん｣



　座布団ごと後ろにずれてきて、背中が合わさる。顔を見ることはないけど、しゃべる振動が直接私の背中に響いてきて。扇風機だけでは拭えない汗っぽさまで伝わってくる。男の人の匂いって嫌なものだと思ってた。ベタベタしてて……でも今は、このままくっついてたい。




　｢二年前って…私バイトもネットもしてない｣


安｢ほんまに覚えてへんの(苦笑)？｣


　｢えっ何？なんかやらかしたっけ？｣


安｢んー、Aちゃんにとっては些細なこと。俺にとっては忘れられんこと………かな？｣

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